金糸雀が鳴くと烏が哭いた
第16話 金糸雀が鳴くと烏が哭いた
「涼萌ちゃーん。お願いがあるんだけどー」
仕事をしていた凉萌に声を掛ければ、汚物を見るような眼差しで見られた。
なんだなんだ、おじさんいよいよ泣くぞ?
そんなことを思いながら、凉萌を見やれば、凉萌は未だ心底嫌そうな顔をしながらも俺の傍に寄って来る。眼帯で隠された右目が俺に何かを語り掛けてくるような、そんな気分になった。
「なんですか、隊長。まさか休みが欲しいとでも?」
「いやいやそんなそんな。そのまさかだって。土下座してでも頼むから明日休みちょーだい?」
「隊長が土下座? それは見物ですね。ぜひ城の大広間でやってくださ……ああ、そう言えば明日でしたね」
涼萌は俺の発した「休み」という言葉に一瞬険しい顔をした後、思い出したかのように頷いた。ポケットから手帳を取り出しスケジュールを確認しているようだ。
俺はそれを見ながら椅子の背もたれに体重を乗せた。
空を見上げれば、不意に窓の外に金糸雀の姿を見掛けた。
誰かが飼っていたのが逃げたのだろう。
綺麗な声で鳴く金糸雀を見つめて、目を細め、そうして両の目を静かに瞑った。
そうすれば記憶が思い起こされることを俺は知っている。十数年前から、知っている。
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