第29話 恥ずかし過ぎる衣装

 私達のアイドル活動の夏合宿中に、突如として自分達でオリジナルの歌を作る事となった。


 それから約3週間の間は、その事で大忙しであった。自分達で作った歌の歌詞を覚えたりと、とにかく色々と忙しい3週間であった。恐らく、今までのアイドル活動の中で最も忙しい時期であっただろ……





 そして今日――


 ついに、この3週間の間、必死に練習をしてきた私達【D-$】のオリジナル曲を、UTubeに初投稿する日となった。自分達のオリジナルの歌という理由での緊張はもちろんの事、それ以外にも緊張をさせる理由があった。


「ねぇ、本当にこの衣装で動画を投稿するの?」


「そうですわ。この衣装の方がリスナーの気を引かせる事が出来ますわ」


「でも…… さすがに、この格好は恥ずかし過ぎるよ!!」


 現在、私達が行っている恰好は、頭に赤いペレ―帽を被り、赤いニーソックスを穿き、白のハイレグの様にキワドいレオタードを着用した衣装であった。


 そして、私達を最も辱めたのは、何とも言えない、このハイレグの様にキワドく、生足だけでなく鼠蹊部や腰付近までもが露出した状態となるレオタードであった。そんなハイレグの様にキワドいレオタードを着ようと言い出したのは、以外にも紗美である。


「そんな事はないですわ。恥かしいと思うからこそ、恥かしくなるのですわ」


「いやっ、絶対に思ってしまうよ」


「そっ、そうですよ…… ぜっ、絶対に意識してしまいます!! こんな格好だと」


 私だけでなく、詩鈴もこのハイレグの様にキワドいレオタードは恥ずかしいと思っていた。


 そりゃそうでしょうね。体育の授業で着るスクール水着ですら今時のは下はスパッツになっているというのに、紗美ったら、どこでこんなデザインのレオタードを見つけて来たのだろう…… 今の私は恥かしいという気持ち以外に、ただ、そう思うだけであった。


 私と詩鈴がハイレグの様にキワドく腰付近まで露出したレオタードを着て恥かしがっている中、女月は以外にも恥かしがってはいなかった。


「う~ん、私はこれでも別に構わないと思うわ」


「どっ、どうしてなの!? 女月!?」


 突然の女月の発言に、私は驚きを隠せなかった。本来なら、ここは凄く恥ずかしがる所なのに、あの女月ときたら、恥かしがるどころか、紗美と同様に堂々としていたからである。さすがに、この様子には私もビックリである。


「だってさ、下半身が陰部以外、ほとんど露出しているおかげで、動きやすいんだもの」


「それだけの為に、恥かしがる事無くいれるの!?」


「まぁ、一応は…… 初めはさすがに恥かしいと思ったけど、いざ着てみて動いたら、普段よく着る制服よりも動きやすくていいと思ったの」


 さすがはよく身体を動かすだけはある。身体をよく動かす女月にとっては、恥かしいという気持ちよりも、実用性があるという気持ちの方が上に来るんだろな? 最も女月は、私や詩鈴とは異なり、陰毛を短く刈っているから、ハイレグから毛がハミ出ないので堂々といられるのだろな。きっと。





 その後、女月はカメラのスタンバイをしている紗美に話しかけた。


「しっかし、桜森さんもよくこんな衣装で動画投稿をやろうなんて思ったわね」


「尾神さんは、その衣装を気に入られたようですわね」


「まあね。なんたって、今までの制服よりも動きやすいし」


「そう。わたくしがこの衣装にしようと決めたのは、先日の夏合宿の時の尾神さんの水着からヒントを得たのよ」


「えっ!? 私の着ていた水着からなの?」


「そうですわ。尾神さんの着ていた競泳水着からですわ」


 そんな中、女月が紗美にハイレグの様にキワドいレオタードを動画投稿の撮影用の衣装にしたのかその理由を聞いていた。すると、紗美は以外にも、先日の夏合宿での女月が着ていた競泳水着からヒントを得たと言い出した。


「あっ、あの…… おっ、尾神さんの着ていた競泳水着って、確か、太股まで覆われているヤツでしたよね?」


「そう、それだよ」


 以前に女月が着ていた競泳水着は、スパッツタイプだったのに、紗美はどこからこんなハイレグを思いついたのだろう? 私はそう考えながら、着ているレオタードのハイレグ部分を両手で掴んでは上に上げたりして引っ張っていた。


 その件に関しては、私だけでなく、女月も同じ疑問を持っていた。


「そう言えば、私が着ていた競泳水着はスパッツタイプの方だったわよ。それなのに、どうしてこのハイレグタイプが思いついたの」


「あぁ、その事ね。それは、スパッツタイプではなく、ハイレグタイプを着てみたらどうなるかなっと思って」


「それだけの理由で!?」


「えぇ、そうですわ」


 紗美から理由を聞いた後、驚いたのは女月だけではなかった。それは、私や詩鈴も同じ様に驚きを隠せなかった。以外にも紗美は、小悪魔的に意地悪な思考だ……





 その後、カメラのスタンバイが終わった紗見は、そろそろ撮影に取り掛かる様、私達に声をかけた。


「カメラの準備が出来ましたから、そろそろ撮影の方を始めますわよ」


「本当に、この格好でやるつもりなの?」


「何度も言いますけど、わたくしは本気ですわ」


「私も、この格好で別に構わないわ!!」


 撮影が始まる直前に、私は再度確認の為に聞いてみると、本当にハイレグの様にキワドい腰付近まで露出したレオタード衣装で撮影をやるのか聞いてみた。すると、紗美だけでなく女月までもが、本当にハイレグの様なレオタード姿での撮影をやる気でいた。


「尾神さんも桜森さんもそう言っているのですから、今回はこの格好でやってみましょ」


「まさか、詩鈴までもが、この恥かしい恰好でやるつもりなの?」


「確かに、はっ、恥かしいかも知れないですけれども…… みんな同じ格好ですし、歌に夢中になれば、恥かしいという気持ちなんてすぐに忘れますわ」


「そうだと良いんだけど……」


 その後、詩鈴も女月や紗美と同様に、ハイレグの様にキワドく腰付近まで露出したレオタード衣装での撮影に賛成をしていた。その為、私以外の3人が事実上の賛成をしている為、私だけが反対する訳にはいかない為、私も恥かしいのを我慢しながら、今回の撮影に挑むことにした。


 そして、動画撮影の為に、それぞれの立ち位置にスタンバイした後、今回の動画の撮影は始まった。今回の投稿は、【D-$】のオリジナル曲を作っていた為、予定よりも遅れての投稿となってしまった。


 動画撮影が始まると、歌とダンスに夢中になるあまり、ハイレグの様にキワドく腰付近までもが露出した状態のレオタード衣装を着てる事を、先程以上に気にする事はなくなっていた。


 これに関しては、詩鈴の言う通り、撮影が始まった途端、ハイレグの様なレオタードの恥かしさは気にする事がなくなった。むしろ、女月の言う通り、制服で踊っていた時よりも、物凄く動きやすくて便利な衣装である事に気が付いた。


 そして、すっかり恥かしい事など気にしなくなった私は、紗美が考えた曲が流れる中、女月が考えた激しい動きのダンスを炎天下の下、大量の汗を流しながら踊り、そして詩鈴が考えた歌を歌った。





 そんな初めてのオリジナル曲での撮影は、5分程で終わる。


「はぁはぁ、今回も、激しい動きでしたね……」


「そうだったかな? 今回のは結構簡単だと思ったんだけど」


 動画投稿の撮影が終わり、紗美はセットしているカメラの電源を切りに行った。


「にしても、この衣装、暑い今の季節にはピッタリだったね」


「そっ、そうですわね。露出が多いので制服で踊っていた時よりも涼しく感じましたわね」


 撮影が終わった今となると、撮影前の恥かしいという気持ちはなくなり、すっかりこのハイレグの様にキワドい腰付近まで露出しているレオタード衣装の良さを気に入っていた。


 しかし、同時に先程の撮影での激しいダンスのせいで、レオタードが食い込んでしまい、お尻がTバック状態になって丸出しになってしまうのもまた、ハイレグの様にキワドく腰付近まで露出しているレオタード衣装での悩みの種となってしまう事に気が付いた。

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