第8話 逃げるのか?

 今日の俺は、昼休みにやっと一人でご飯を食べれる時間に巡り会えた。

 というのも、小苗は友人に強制的に弁当を一緒に食べようと誘われているためいない。

 一方、冷涼はどこに行ったのか分からない。


(ふん!あいつも同じ理由だろ。

 何心配してんだ俺は……)


 前の昼休みの時の冷涼を思い出し、頭の中でちらつく。


「今は一人でご飯を食べるれるこの時を堪能しよう。そうさ、俺は一人がいいのだから」


 自分の中で言い続けながら、いつものように屋上へと向かう。

 その時、階段を登っていくのだが屋上の方向から、女子のような声が複数人聞こえる。

 俺のお気に入りの場所をと思いながら、屋上の少し空いている扉から様子をうかがうようにして見る。


「まったく言われたことすらできないなんてゴミねお前!」


 その光景は、明らかにいじめであった。

 そして信じられなかったのが、被害を受けているのは冷涼だった。

 腹を殴られ、咳が出る冷涼。


「嫌だくらい言ったらどうなの!、こんな女のどこがいいのかしら男って」


 すると、涙を流しながら耐えている冷涼が、扉の方へ走ってくる。


「逃げるんだぁ、だっさ!」


 加害者は好き勝手言っている。

 冷涼は扉を勢いよく開け、俺の姿も目をつぶっているせいか分からずに階段を降りようとする。

 だがそこで、無理やり俺は手を掴んだ。


「逃げるのか?」


「あんたには関係ない!」


 八つ当たり気味に、質問に対する答えを薙ぎ払うように言う。


「なぜ助けを呼ばない。なぜそこまで耐えようとする。なぜ嫌だと言わない」


 また、疑問を口に出す


「助けてくれないんでしょ!、私はあいつらみたいになりたくないの!」


 そういう事かと、同じ経験をしたことがある俺は理解する。


「言いたいことを話さないのは、いじめに屈しているのと同じだ」


 俺がそうであったように、そう思いながらも言葉を続ける。


「俺はこうも言った。いや、言ってなかったっけか。助けというのはいざというときに求めるものだ。だがまずは、お前の言いたいことをあいつらにぶつけろ!」


 その言葉に冷涼は自然と体が動き、屋上へと方向転換する。


「もう、私をいじめないで!!!!!!」


 冷涼は屋上に上がり、大きな声で自分の言葉をぶつける事に成功した。














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