第34話 土の神殿

ジェーンが近くに寄ってくると目が離せなくなる。ドキドキする。これは恐怖症だろうか。いやたぶん恋だろう。そんな自分がたまらなく嫌になる。不自然にならないように彼女から視線を外す。妻が亡くなってまだ1年。彼女の思い出を鮮明に思い出せる。俺はそんなに軽い男じゃないと思いたいが、現実はシビアだ。 噛み締めるように挨拶を交わすのが俺の精一杯だった。


今は魔法の習得とドラコの世話で精一杯だ恋愛などとてもできるほどの余裕はない。だが現実問題として気になる相手が仕事場にいるということは仕事にならない。ついつい目が彼女を追ってしまう。それを理論的に無理やり切っているので無視しているようにも見えてしまう。本当に恋愛というやつは厄介だ。


さて次は南極大陸だ氷の下は大陸になっている。どうやって入るのだろうか。

「わしの時は土だったのじゃ。仕方ないブレスで行くか」

そう言いながら氷土に真っ赤に燃える火のブレスを浴びせ掛けていた。相変わらずドラコのブレスは反則だと言わざる得ない


俺の予想ではガーディアンと言うか守護者はペンギンの予想である。ジェーンはアザラシが出るのではないかと喋っていた。


軽い話をしながら祠の中を進んでいくのはもう慣れたようなものだ。慢心に気をつけながら進まなければいけない。祠の先を進むと居たのはミミズだった。確かに土と言えばミミズなのかもしれないが…きっとこの時の俺とジェーンの顔は予想が外れ苦笑いしていただろう


俺はいつものようにバックパックから真空パックされた焼肉を取り出し食べ物の準備をする。 どんな異世界に行ったって焼肉を料理して魔法を習得する英雄などは、どこにもおるまい。なんてかっこ悪い英雄譚なんだろう。これでは女性が憧れることはないだろう。子供もがっかりしていただろうと思う。そんな事を連想しながらしかめた笑いをしていた俺だった。


土魔法といえばやはりアースウォールではないだろうか。「アースウォール」と呪文を唱えると目の前に土の壁が現れた。今回の土魔法はジェーンに渡す予定なので一旦基地に戻り渡す作業に入りたいと思う


魔法譲渡の為に惚れた女と指を絡ませて手をつなぎ、冷静に話をする大人な俺。そんな理想とは大違いだ。彼女に手を触れるだけで顔は真っ赤になってしまう。とても隠しきれやしない。

「どうしたのトオル顔が赤いわよ」

やはりジェーンも気づいたようだ 。

「いやすまないちょっとお腹の調子が悪くて我慢してるんだ、おならが出たらごめんよ」

なんてかっこ悪いセリフだ。この言葉に惚れる女はおるまい。

「しょうがないわねトオルは後で薬あげるから部屋に来る」

俺はそんなに軽いやつじゃない。そう思いながらも逆のことを返事していた

「そうか。じゃあ後でジェーンの部屋に行くよ」

魔法の譲渡は思いの外早く終わった。後はジェーンが魔法具現化させるだけだ。ジェーンの部屋に行くことについて俺はドキドキとワクワクが止まらなかった。前の妻のことを思い出すと嫌な気持ちにはなるが恋心には勝てなかった。俺はジェーンの部屋に行き思いの丈を伝えること決心した。


こんこん、というノック音に合わせて俺は到着をジェーンに知らせた

「おいジェーン来たぞ」

「まって、今開けるわ」

ガチャリと扉が開くとジェーンは中に招き入れてくれた。

「えーと胃薬よねちょっとまって」

「待ってくれジェーン薬はいらないんだ」

そのまま前を見つめ利き手である右手を彼女の耳たぶを触るように伸ばした。

「いけないわトオル私たちはお互いを監視しないといけないのよ」

そう言いながらも彼女の顔と赤い唇は俺の顔にまっすぐとゆっくり進んできた。

俺は両手でジェーンの顎を取り口づけを交わした。確信があったわけではないがジェーンが俺に惹かれていることは薄々気づいていた。

見つめ合いながら何度も口付けを交わしベッドルームへとふたりは消えていった…

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