お嬢様冬休み到来みたいです!ー寒いのは苦手なんだよな〜ー
体育祭も終わり学校祭も終わる、そして冬休みが近づく季節。
相馬は摩耶と付き合い始め、奈々は学校祭が終わって以降もクラスだけではなく他学年との交流も深くなった。
環が入学初日に言っていたクラスが仲良くなるという目標は枠を超えて良くなっていた。
「…はぁ、相馬はいいよな〜」
「ん?何がだ?」
トイレで手を洗う相馬に誠人は相馬の横で羨ましそうに話し始める。
「だって摩耶ちゃんと付き合うなんてめちゃくちゃいいじゃないか、可愛いし綺麗だし…」
「まあ俺もまさか付き合うとは思ってなかった」
相馬自身も摩耶と付き合うことが今だに信じられないと思っていた。だがそれと同時に女嫌いを治そうと考えつつトイレを出て廊下を歩く。
「女嫌いのお前がな〜、タマちゃんも言っていたしな、女嫌いの相馬がめちゃくちゃ面倒臭いって…」
「ああ、そういやお前委員長だから環から愚痴みたいに話を聞くのか、お前もお前で大変だな」
「ははっ、タマちゃんは優しい人だから別にいいけど、そういやお前知ってるか?」
「ん?環がどうかしたのか?」
「大したことではないらしいけど一度お前がイジメの件に関して関わった際に環は教頭から警告をくらったらしいぜ」
「いや聞いてない、それがどうした?」
警告程度なら環は笑って誤魔化しそうだと甘く見ていた相馬。
「んまぁ、その警告は次に問題が起きたらクビ?謹慎?かな、分からないけどワンアウト状態だってよ」
「へぇ……え?それ体育祭の奈々は大丈夫だったのか?」
「アレは盛り上がったから別にいいらしい、問題というのはまたイジメとかなんだけどどいうわけか相馬は関係ないらしい。う〜んわからねぇ」
誠人は考え込む、相馬はその問題というのは摩耶が関わった問題ということに気づく。誠人は一度警告をもらったというが実際は摩耶の両親にも警告はもらっている。実際はツーアウト状態。仮に学校側にバレなくとも摩耶の両親にバレてしまえばおのずと学校にもバレる。
「マズいなぁ……」
相馬は摩耶の事もあるが環の事も考えるとなると気が重くなった。
教室に戻り席に着くと摩耶が来た。
「相馬さん」
「ん?」
「そろそろ冬休みですね、どこ行きますか?」
「どこ行くって…まあそうだな…」
夏休みではアメリカに連れていかれたことを思い出しさすがに今回は国内でいい考える、しかし摩耶の両親の事を思い出す。
「そういや、摩耶の両親は俺と摩耶が付き合うことに関して何か言っていたか?」
「あ〜、それは言ってないです」
「どうして?」
理由を聞くと摩耶はなんとも言えない表情で相馬と付き合う事がいけないと雰囲気で分かった。
「…やっぱ両親は俺の事を?」
「はい…、相馬さんは悪くないのですが、その相馬さんの良い所を話しても悪い印象は外れないらしいです……」
申し訳なさそうに謝る摩耶。
「それは仕方ないな、けど正直俺自身も付き合うって感覚がよく分からないからさ」
摩耶は異性との付き合いが全くない、そして相馬も同じく異性との付き合いが全くなかったため実際に男女が付き合うとなると何をどうすればいいか分からなかった。
「そうですね…」
変わった事と言えば最初の頃よりよく話すようになった、それ以外は変わらない。
結局、特に変わった事もなく一日が終わる、家に帰りリビングのソファーに横になってテレビを見ている奈々に相馬は聞いた。
「なぁ、奈々」
「ん?何よ」
もはや人の家を自分の家並にくつろぐ奈々はいつの間に買ってきたのか行儀悪く横になりながら煎餅を食べていた。
「付き合うってどいうことだ?」
「ん〜、それ私に聞く?私の事を振っておいて…」
「あ〜、いやそれは本当にごめん。というかまだ根に持っていたのか?」
「当たり前よバカ!女の子はね、振られたらずっと根に持つタイプなの」
起き上がり煎餅を床に落として怒る奈々。
「煎餅落とすな、それより疑問だったんだが奈々はなんで俺に告白しようと思ったんだ?俺とお前の仲は正直良くなかったよな、そんな付き合うとは無縁だった気がする」
相馬は奈々が落とした煎餅を拾い上げ奈々に渡す。
「まあ無縁だったね、正直最初に会った時は本気で汚い男だと思ってた、けど夜抜け出した時にチンピラ共と戦った時は楽しかったしあんたを見違えた。その後はあんたと話してる時は楽しかった。気づいたら惹かれていた、けどちゃんとした気持ちなのか分からなかったから確かめたかった。あんたを気にし始めたら面と向かって話せなくなっていた。けどそれは惚れていた訳じゃなかった。それが分かったのが学校祭のあの勝負だったのよ」
「なるほどね、それって摩耶以外に親友が出来たってことか?」
自分から言い出すのは恥ずかしいと思う相馬だが奈々の話と子供の時の話を重ね合わせたら摩耶以外にちゃんとした友達が出来たことに嬉しかったと勝手に思った相馬。
「ば、バカ。違う…けどそう言われるとそうかもしれない」
「まぁ俺もお前との付き合いは悪くないと思う、体育祭や学校祭の勝負は面白かったしな。今は摩耶もいるし俺もいる。クラスメイトもいる。だから寂しくはないだろ」
「……バカ死ね」
子供の話を引き合いに出されたことに恥ずかしくなったのか急に縮こまる奈々。
「んで、付き合うって何すればいいんだ?」
「し、知らないわよ!このバーーカ!!」
雰囲気をぶち壊すような相馬の一言で奈々は相馬に思いっきりビンタをかまして相馬の部屋に走って入っていった。
「いって〜、俺は聞いただけじゃん…」
「…ありゃりゃ、やっちまったな相馬」
「環、いつの間に帰ってきた?」
ニヤニヤしながらリビングに入ってくる環。
「今さっきよ、それより冬休みは行く?」
行くと聞かれ相馬は何のことかすぐに分かった。
「…ああそうか、行くよ」
浮かない表情になる相馬。
「もう一年経つのね…」
「そうだな…」
暗い雰囲気になるリビング、環は手を叩き雰囲気を変える。
「ま、今はご飯が食べたい、相馬ご飯ちゃんと作った?」
「一応な、奈々も呼んでくる」
「は〜い」
相馬と環は普通に食べる中、奈々は相馬を睨みつけながら食べた。
その夜、相馬は摩耶から電話がかかってくる。
「もしもし、摩耶か?どうした?」
「あ、いえ特に大したことではないのですが…。冬休みはクラスの皆さんと何かしませんか?」
「ああ、いいじゃん。何するんだ?」
「えっと…、ちょっとそこまでは考えてなかったです…」
「そしたら明日全員と話すか、環にも話しとく」
「あ、ありがとうございます。それではおやすみなさいです」
「おやすみ」
電話を切ると相馬は思い出した。
「あ、やっべ冬休みはあそこに行くんだった。でもさすがに日にちは被らないよな」
環と約束した冬休みに行く場所、しかし摩耶がクラスメイト達と何かしたいという二つの予定が出来たがさすがに日にちは被らないだろうと思い環に相談する、環も相馬と同じ考えで日にちさえ被らなければOKということになった。
次の日、放課後に環を含めてクラスメイトが残った。
「冬休みクラスで何かしよう、という事で何がしたい?」
環が教壇に立ちクラスメイトに聞く。
「冬休みか〜、何をするか」
「冬休みならクリスマスじゃない?」
「いいかもね、場所はどうする?」
冬休みに何かやるとなると大体の人はクリスマスかイブに合わせる。クラスの中でも日時は決まりつつあった。しかし場所だけが決まらなかった。
悩んでる中、摩耶が急に立ち上がる。
「あ、あの。場所は私の家でどうですか?」
「摩耶、それは…」
クラスメイトには摩耶がお嬢様ということは隠してる、しかし家に招くとなると必然的に摩耶がお嬢様ということがバレてしまう、相馬は止めようとした。
「奈々ちゃんと同じように提案者がそれなりの物を提供するのが私達流です」
摩耶は笑顔で答えるが小声で止めようとする。
「そんなのあるのか?いやそれでも奈々と違ってお前がお嬢様とバレたら…」
「いいんです、楽しむことが出来れば」
「本当に大丈夫か?」
「はい、お父様とお母様を必ず説得します」
「……分かった、摩耶が言うなら」
何を言ってもお決まりの流れだと察した相馬は仕方なく首を縦に振るしかなかった。
「じゃあ決まりね、日時はクリスマス。場所は摩耶ちゃんの家。当日は学校集合でいい?」
日時と場所が決まり環が最終的にまとめるとクラスメイト全員は返事をして決まった。
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