ドッキリを仕掛けよう~あの、絶対バレてますよね?~

【お世話になりました】そうま

第1話 結婚する鳥居さんにサプライズ

 個室で談笑する男女を覗き見する……なんと背徳的な行為。だが、すごく気になることがある。


「そらさん、これバレてませんか」

「大丈夫です、しっかり作戦を立ててますから!」


 作戦を書いた紙を見返す姿は大真面目だ。視線をターゲットに向けると、ターゲットの鳥居さんはこちらにニコニコ手を振っている。そらさんは全く視線に気がついていない。……もう、バレてるよね??




 鳥居さんの結婚は1週間ほど前にそらさんと3人のグループメールで聞いた。そして今日、ここでご飯をすることも同時に聞いた。「これはお祝いしなきゃ!!」と私に連絡してきたそらさんの俊敏性がいかんなく発揮され、いつの間にかこんな作戦が出来ていた。奥さんになる予定の方にドッキリする許可も取ってるという。ただただ脱帽。


 今回のターゲットである鳥居さんは昔で言う「3K」、非の打ち所がないところが欠点な男性である。なんでこの人結婚してないんだ? と私とそらさんで時々喋ってた(のを聞かれて「君たちはどうなの?」と素敵な笑顔で言われたこともあった)。

 

「このあとケーキが出てくるので、その時にお皿を運ぶ予定です」

「ケーキを、私とそらさんで?」

「もしかして水川さん、僕がコケそうとか思ってます?」

「全くを持ってその通りです。あっ、鳥居さんトイレに出るみたいです、隠れましょう」


 慌ててトイレと反対方向の柱の影に入る。鳥居さんはこちらをチラッと見たあと、トイレへと入っていった。店員さんが不審者を見るような目で私たちを見るが、お客さんなので一応丁寧に話しかけてくる。

「お客様、ケーキのご用意が出来ました」


 ケーキはシンプルないちごのショートケーキ。プレートに「結婚おめでとう!」の一文。この人たちとじゃなかったら絶対しなかっただろうな、こんなこと。

「お名前はお入れしなくて良かったですか?」

「いえ、大丈夫です!」

 そらさんは店員さんと入るタイミングなどを話し合っているが、この姿をトイレから戻ってきた鳥居さんに見られてる。むっちゃ見られてる。ケーキ見えちゃってる。でも、ここまできて「見られてますよ」と準備してきたそらさんには言いにくい。とりあえずそらさんにバレないように鳥居さんに頭を下げる。白い歯を見せてニコニコしながら部屋に戻っていった。




「いよいよだー、うわー緊張するなー」

「そうですね……」

 ドッキリは完全に失敗している。どんな顔したら良いんだ。どうしよう、笑う? えっ? そらさん引き戸開けた、待って心の準備が!!


「結婚おめでとうございます!!」

「お、おめでとうございます!」

「そこ揃えようよ」

 鳥居さんも奥さんになる方もケーキを見て喜んでくれた。ケーキを囲んで2人の写真を撮り、邪魔にならない様に帰ろうとしたら「少し飲んでよ」と言われる。




 喜んでくれたからよかったけど、ドッキリは完全に失敗している。そんなことも気にせずどんどん無くなるビールとハイボール。この人たちの少しは少しじゃないのは、ここ数年の付き合いでわかってる。これはなかなかみんな酔っ払っておかしくなってるし、奥さんも楽しそうにしてるし、朝までコースだな。明日有給とって仕事休もう。


 ──今更だけど、鳥居さん結婚おめでとう。

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