第6話 らいばる

 応募すること。


 有料の独自ドメインを入手してワードプレスを使い、ブログを開設する。ドメイン代もレンタルサーバー代もタダみたいに安い。月1000円とか2000円くらいの金額を払って立派なブロガーに変身した。


「まだ一文字も書いてないけど」


 ネットでググれカスしたところ、有料ブログはドメイン力が弱く最初の1年間は人が集まらない。なのでPVが伸びなくても更新し続ける忍耐力が必要とのこと。


 まるでどこかの小説投稿サイト。かのカクヨムはオープン時、書く人の供給過多を起こし、PVがまったく増えなかった。読む人がおらず、0の日々を味わった。


 公式サイトと個人ブログは違う。アメーバやはてなブログは、大きなドメインを持っているので、俗にいう無料ブログは人が集まりやすい。しかし、何年もブログをやる人にとっては有料ブログにしておいたほうが良いそうだ。それは、ま、結果待ち。


 ブログを始めて二日目の登校日。雨は高校で不思議な出会いをする。


 昨日は中学生姿の久守機構。今日は日和という少女だった。


「転校生の久守日和です。よろしくお願いします」


 クラスに突如として現れた彼女は、昼休み、クラスの話題の中心になり、日和の席の周りには男女10人ほどが会話に加わった。転校生に興味のない雨はそそくさ食堂にパンを買いに行こうとすると、廊下で後ろから、例の転校生に声をかけられた。


「待って、推理雨さんですよね?」


「ん、はい。雨です」


 久守日和という人物は久守機構と同姓から察するに時空警察に関する人物だった。機構が公的なアンドロイドだとすると、日和は未来人。時空警察の許可を得て、この時代にやってきたらしい。目的は借金をなくすため。どこぞのバカ二十歳と同じ理由だが、彼女の場合、親族が多額の借金を背負ったらしい。家族の負債を担がされて、未来ではどうにもならず現代に飛んできた。今、行動すれば未来の借金が消えるそうだ。


 と長々とした話を屋上で聞かされた。なお、菓子パンと牛乳はおごってもらった。


「どう、雨くん。私も同じような理由でフリーランスを目指しているの」


「ふ~ん。未来人っていうから奇想天外な人だと思ったけど、割とまとめだ」


「そうね。私は君と近い時代からやってきたから。科学力や生活風景は同じよ」


「で、僕に屋上まで来て大事な話って何だ?」


 フリーランスの一歩としてブログを始めた雨はふよっこ。アドバイスなんてできない。


 日和は大胆に身を乗り出して雨に迫った。


「私とライバルになってほしいの!」


「……ライ……バル?」


「そう。この時代、雨くんと切磋琢磨することが私の借金を返す近道になるんです」


 一人暮らしをしていた雨の目の前に現れた人たち。二十歳の自分。時空警察の久守機構。そして、三人目の久守日和は、フリーランスの仲間になりたいと申し出た。

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