第16話 英雄『後日談』

 結果から言おう。

 バルバッソ王国のリューグー王国への進行は、取り消しとなった。

 元凶は、国王の妻であるピンクスハートだった。

 生まれつき魅了の魔眼保持者──だったわけではなく、二年ほど前にある男から魔眼を埋め込まれたのだという。

 もともと、彼女の性格は穏和だったが、魔眼を宿した頃から性格が一変。それが原因で今回の騒動を起こしたのだった。

 どうやって収集をつけたのかというと、ピンクスハートの殺害。

 魅了を解けば、とりあえず進行は収まる。

 殺したのは、ジルだ。ジャンヌにはさせなかった。ジルもあのメイドも。

 ピンクスハートが死んだところで、悲しみの声が国民から聞こえるようなことはなかった。リューグー王国への進行に批判的な声が多くあがっていたからだ。

 国王も彼女には愛想を尽かせていたようで、死んでも誰が殺したのか犯人を突き止めようとはしなかった。

 国王は今回のお詫びに賠償金をリューグー王国に払い、もとから交流したいと思っていたため、互いに手を結びたいと言い出した。


 これで、一件落着、かと思ったが、そうはいかなかった。


 ジャンヌが処刑された。

 国が処刑したのではなく、ジャンヌが生れた村で長年居座っていた外から来た村長が、その仲間である騎士たちと処刑を執り行ったのだ。

 処刑方法は、火刑。

 処刑場は、その村。

 何故、ジャンヌが村に戻ったのか。

 ただの休暇だった。

 ジルもその日、ジャンヌの地元の村の反対側にある自分の地元の街に帰っていて、ジルはその情報を一週間後に聞くことになるのだった。


 何故、ジャンヌを処刑したのか。

 魔法の才能があると言われていた村長だが、自分よりも優れた才能を持っていたジャンヌを妬み恨んでいた。だから殺した。

 ガキっぽい、下らない理由だった。そんな理由でジャンヌは殺されたのだ。まだ、自分が目指した英雄にはなれていなかったというのに。

 もちろん、村長は国王の手によって処刑された。

 ギロチンで処刑ではなく、ノコギリでギコギコと徐々に首を切り落とすという──ものすごく痛い方法でだ。

 そこまでしないと、ジャンヌが報われない、と国王は言っていた。


 そんなこんなで、最悪な結末で幕を閉じた。

 ただ、それだけの話だった。




◇◇◇




「ジャンヌ、ここなんてどうです?」


 メイドリスは、左に立つ少女に声をかけた。

 一五〇あるかないかの身長で、栗色の髪はショートにし、白のワンピースを着た少女の名は、ジャンヌ。


「二階建てだ! テラスあるし、おっきい! 庭も広い!」

「お金はありますからね」

「僕には聞いてくれないんだ」


 右には幼女が。


「エリシアは、どこでもいいと言うでしょ」

「そうだけれど。聞いてくれてもいいと思うんだ」


 はいはい、とメイドリスは聞き流した。


「で、どう? ここいいんじゃない?」


 メイドリスは、エリシアに対しては敬語ではなかった。ジャンヌも敬語はやめてと言ったのだが、結局敬語のまま。気に食わない、とジャンヌは頬を膨らませたとか。


「まあ、いいと思うけれど」

「なら、いいじゃない」

「そういう問題ではないよ」

「そういう問題ですよー」

「じゃあ、早速いこ!」


 ジャンヌが二人を強引に引っ張り、建物から引きずり出した。


「どんな家か楽しみだよっ!」


 ジャンヌは、にこりと笑った。















────────────────────────


 なぜ、ジャンヌが生きているのかは、後でわかります。今は、スルーで。

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