第4話 多数傷者

 太陽の姿はない。まだ昼を過ぎたばかりだというのに、空は分厚い濃い灰色の雲に覆われ、時計がなければ夕方かと思うほどだ。

 少し前に、まどかから俺の携帯電話にメールが届いた。「本当は明後日が宿直だけど、交代して今日になりました。だから明日は早く帰れると思うよ」ということだった。誰かに代わってくれと言われたのだろうか、それともまどかが希望したのか。どっちにしても、俺にはうれしいことだった。

 まどから毎日勤務員には、宿直勤務がある。災害出動時には指揮隊に乗車し、現場の情報を収集したり広報したりするのだ。情報員という。現場でホースを持つでもなければ、資器材を搬送するわけでもない。初動時は発見者、通報者、逃げ遅れ等の情報を集めるのがその主な任務である。また、災害現場の撮影をする場合もある。

 これまでの救急出動件数は一件。今日は交代要員もいるし、明日はあまり疲れないで非番を迎えられそうだった。なので、俺の頭の中は、明日どうしようかという算段で埋まり始めた。

 その矢先だった。事務室内に甲高い音が早いテンポで流れた。救急出動ではなく、火災や救助の、災害出動を知らせる合図だった。

 皆の動きが止まった。耳と意識はスピーカーに向けられる。

 スピーカーからの声が止むと、ひと呼吸おいて出動の一斉ベルが出張所内に鳴り響いた。それを合図に、所内の空気が一気に動く。JR池袋駅西口近くの交差点で、車五台の交通事故。脱出不能者あり、という内容だった。

 傷者の数、怪我の程度などは付加されなかった。到着してみなければわからない。

 所員全員が車庫へなだれ込む。

 ポンプ隊員は、出動準備に若干手間取っていた。装備が火災出動とは異なるからだ。防火衣に長靴といういつもの装備ではなく、編み上げ作業靴を履くのである。現場で動きやすいようにというのが理由だ。かつては俺も何度か救助活動に出動したことがあるが、ひもを編み上げ、縛る手間がじれったいので、とりあえず車に乗り込み、到着までの間に準備を終えるよう心がけていた。

 いつの間にか雨が降っていた。傘がないと一、二分でずぶ濡れになるほどの雨足だった。

 ポンプ隊員らは防火衣を着始めた。合羽の替わりだなとわかった。濡れながらの活動は身体が冷えるのだ。しかし、はしご隊ならともかく、編み上げ作業靴に防火衣の組み合わせは、どこか違和感がある。

「さてと、お呼びがかかってしまいましたなあ」

「仕事だもの。しかたがないさ」

 隊長と小田原さんの会話からは、これからどこかへドライブにでも行くのかと思われるほどの余裕を感じた。救急隊は編み上げ作業靴を履かないので、俺たちは車内で待機している状況なのだ。ポンプ隊と救急隊が同時に出動する場合、救急隊はポンプ隊の後に出てゆくことになっているのだ。

 そんな中、ところで俺は、現場で何をしたらいいのだろうかと悩み始めた。車五台の交通事故で、しかも脱出不能がいるということでは、何から始めたらいいのだと気ばかりが焦ってしまい、落ち着かなかった。

「お、俺は何したらいいんすか」

 たまりかねて訊いてしまった。

「テツ、落ち着けよ。まずは到着してからだ。到着して、現場を見て、状況を確認しないとな。すべてはそれからだ。指令内容がそのまま当てはまるとは限らない。変な先入観は捨てろ」

 小田原さんは怒鳴るような声で言った。

 隊長も頷いている。

 その時、ポンプ隊のクラクションが鳴った。出動の合図だった。

 ポンプ隊がエンジン音を上げて車庫から出る。その後に救急隊も続く。

 大通りにサイレンの合奏が響き渡った。

 災害現場は目と鼻の先だ。しかしそれは、何もなければという条件付だった。駅前の大通りに出たとたん渋滞に巻き込まれた。前を行くポンプ車が止まった。車がひしめき合っていて、動くに動けないのだ。

 ポンプ車はサイレン吹鳴をやめた。隊長もサイレンのスイッチを切った。赤い光だけがひかひかとあたりを照らしている。

 時間だけが過ぎてゆく。

「信号が変わるまで無理だな」

 小田原さんが呟く。

「変わっても進むかどうか」

 え、なんでよと訝しんだ小田原さんに「これ、事故で渋滞してるんじゃないのか」と隊長。

 現場は目の前なのだ。あと二百メートルもないはずだ。

 そっかあ、はあ、と小田原さんは大きな溜息をついた。

 だからといって、下車して駆けつけるわけにもいかない。俺の中で、じれったい気持ちと、もっと時間がほしいという気持ちとが入り混じる。


 片側三車線の道路だが、路上駐車車両のおかげで二車線道路になっている。さらに渋滞。留まっている車両は皆、道を譲ってくれようとしているのだが、動きようがない。

 なかなか車は流れない。サイレンを鳴らしても、どうにもならない。時を待つしかなかった。

「真田、傷者多数の時は、まずそれぞれの傷者の重傷度を観察し選別することだからな。目先の傷者ばかりに目を奪われてはダメだぞ」

 隊長に念を押された。そういえば、救急隊隊員研修でもそんなことを習ったなと思い出す。実際に身に降りかからないことには、いくら教わったところで絵に描いた餅なのかも。百聞は一見にしかずなのだと得心する。

 それでも徐々に車は流れた。数分後、俺たちはポンプとともに指令現場に到着した。他の隊は未着。遠くでサイレンがかすかに聞こえる。

 隊長が車内で本部に無線連絡をした。車内拡声に切り替えてあるので、話す内容は俺や小田原さんにも聞こえる。

「こちら本町救急。現場到着。なお、最先着にて現場を統括します。どうぞ」

「本部了解。なお、状況はいかが」

「げ、ん、ちゃ、く。こ、れ、か、ら、か、く、に、ん、で、す。どうぞ」

「本部了解」

 気のせいか、本部員の「了解」と言う声が力なく聞こえた。「せっかちな野郎だ」と隊長は言い捨て、無線の受話器を置いた。

 その後すぐに俺たちは外に出た。たちまち雨のシャワーが全身に降り注いできた。下を向くと、ヘルメットからしずくが滴り落ちる。俺と小田原さんは、救急資器材の入ったかばんと除細動器をストレッチャーに載せ、ビニールシートで覆った。

 ポンプ隊員らは既に皆下車し、現場に向かっていた。

 指揮隊の姿はまだ見えない。そういえば、今日はまどかも指揮隊員だったな、現場で会えるはずだな、などと俺はいらぬことまで考えはじめていた。

 あちこちからサイレンが聞こえてきた。

 交差点内中央、一台の車両をはさむようにして、五台の車が無残な姿をさらしていた。おそらく右折車両に対向車線の直進車両が衝突し、それに後続車両が次々に追突したのだろう。右折車両プラス四台の玉突きである。

 直進者の後方から突っ込んだのは、トラックだった。四トントラックだ。簡単には止まれまい。そのトラックにはじかれた乗用車は、フロント部分が押し曲げられ、「く」の字に変形していた。

 幾重にもなった野次馬の壁を気にしながら、俺は進んだ。足元が覚束ない。徐々に不安の波が、身体の中に押し寄せてくる。俺はできるのか、大丈夫なのかと自らに問いかける。

 今まで俺が扱った交通事故の怪我人といえば、皆歩行可能で意識清明。出血している者などいなかった。だから、この状況を目の当たりにした時、当然と言えば当然だが、俺はうろたえた。

「た、隊長」

 今まで俺が扱った交通事故の怪我人といえば、皆歩行可能で意識清明。出血している者などいなかった。だから、この状況を目の当たりにした時、当然と言えば当然だが、俺は言葉が出てこなかった。

「なんだ、もうビビったのか」

「い、いえ」

 俺は顔を小刻みに横に振った。隊長は余裕の表情で、どこか楽しそうでもある。

 ポンプ隊の中隊長と小隊長の姿はすでにあった。菅野隊長を先頭に、三人で足元を確認しながら「くの字」に曲がった車に近づく。俺はトラックを見上げた。

 ポンプ隊のサイレンが急に間近に聞こえ、止んだ。赤色灯が目に入った。応援隊が到着したらしかった。遠くからはまだサイレンが聞こえている。

 トラックは運転席が高いので、中の様子はほとんどわからなかった。フロント部分が若干破損していた。

「くの字」になった車のフロントガラスは、当然のごとく粉々に割れていた。エアバッグが二つ、並んで膨らんでいるのはわかったが、そのせいで中の様子は確認できない。ポンプ隊小隊長と菅野隊長がエアバッグをかきわける。

 中隊長は「まずできるだけガラスを取り除け」と隊員たちに叫んでいる。

 俺は、ただ見守るだけだった。

 と、菅野隊長はふいに中腰のまま振り返り、俺たちに向かって叫んだ。

「真田ぁっ、二台目を確認しろおっ。オダさんは三台目だ。後は順次よろしくぅ」

 凛とした声に反射的に「了解っ」とは言ったものの、おれは緊張していた。なにせ複数の傷者を扱うことなど初めてのことだ。気持ちはむしろ尻すぼみぎみだった。重傷度の選別をひとりでやらねばならないことの責任の重さに、俺は正直ビビっていた。

「しっかりな。本来なら隊長が確認するんだけどよ、まず、傷病者の数と、それぞれの状態を確認して、それを隊長に報告すればいいから。そうしたらそのうち後着の救急隊も来るだろう」

 小田原さんは軽く言うのだが、俺は、俺の手にその人の命がかかるかもしれないと考えると、武者震いが出た。

 俺は、菅野隊長と「くの字」になっている乗用車とを横目で見ながら、その後部に追突した車に向かった。白い軽乗用車がフロント部分をへこましていた。ヘッドランプも変形していた。運転席側のドアもゆがんでいる。

 下を向くたびに、雨のしずくがヘルメットを伝って落ちる。白衣の上からも雨はしみ込み、じっとりと汗をかいたかのように身体は濡れている。生暖かい。

 子どもの泣き声が耳に飛び込んできた。助手席の側からだった。

 エアバッグが作動しており、中が確認しづらかったが、運転席にいる母親らしき女性がうなだれているのはわかった。髪が長いので表情はわからない。「大丈夫ですか!」とフロントガラスを叩いた。

 ドアを開けようとしたが、ゆがんでいるし、そのせいでどこかが引っかかっており、ガタガタいうものの動かなかった。やがて母親がゆっくりとこちらを見上げた。二十代後半くらいだろうか。瞳には力が入っていない。視点が定まっていなかった。まさに「うつろ」な表情だ。俺は、大丈夫ですかと声をかけ続けた。

 助手席では、チャイルドシートに収まった女の子が顔を真っ赤にして泣いているのが見えた。二歳くらいだろうか。顔中が涙で濡れている。

 俺の顔と身体は熱くなった。これでも正規にはポンプ隊員だ。何とかしなくてはという気持ちがこみ上げてきた。

 助手席側ドアが運良く開いたので、子どもをまず引き出した。続いて泣き叫ぶ子どもを抱きかかえながら、母親に呼びかけた。這い出るようにして助手席に移った母親の右手を引っ張った。

 ようやく脱出できた母親は、子どもを抱きかかえたまま、車の傍らにしゃがみこんでしまった。

 ちょうど様子を見に来たポンプ隊員に「母親を頼みます」と告げ、俺は子どもを抱きかかえ、救急車まで急いだ。女の子は母親と離れるのを嫌がったのか、再び泣き出した。

 雨は、ゆっくりと、事故現場を包み込むように降り注いでくる。俺は、ヘルメットからのしずくが子どもにかからないよう気をつけながら急いだ。

 ざっと観察をしたところ、女の子に外傷はなかった。なかなか泣きやまない。少ししてから、ポンプ隊員二名に両脇を抱えられ、救急車までやって来た母親の姿を見て、幾分おとなしくなった。母親はなんとか気を取り直しはじめたようで、こちらの質問に対し、ぽつりぽつりと受け答えができるようになっていた。


「大丈夫ですかあ」

 やや間延びした声でドアを開けて入ってきたのは、まどかだった。緊張していた空気が緩んだ。防火衣にヘルメット姿が、どこかアンバランスで愛嬌があった。

 やあ、と俺は目で合図をした。

 まどかもちらと目を合わせた。ヘルメットからしずくが滴り落ちた。

「遅くなりました。指揮隊到着しました。状況をお願いします」

 そう言ってから、彼女は母親とその娘のほうに顔を向け、「大丈夫ですよ」とにこりとした。

 俺はまどかに、母と子を救出した経緯を簡潔に説明した。

 救護所も設置されましたからねと、まどかは念を押すように俺に告げた。傷病者が多数発生した場合、救護所が現場に設置されることになっているのだ。バイタルサインは正常です、と指揮担当隊長に告げ、母子を指揮隊に引き継いだ。事故現場の手前に指揮隊車は停車しており、その傍らの歩道にブルーの防水シートが敷かれ、指揮本部と救護所は隣接で設営されていた。隊長と小田原さんの姿はまだなかった。

 ふと気づくと、赤い光のまたたきがやたらと視界に入った。

「テツ!」

 小田原さんの声が耳に飛び込んできた。声のした方向へ顔を向ける。

「こっちだ。早くこっちに来い」

 小田原さんの近くには隊長の姿も確認できた。周辺では、オレンジ服に身を包んだ数人が動いていた。レスキュー隊だった。彼らもいつの間にか到着し、活動していたのだ。俺はまったく気がつかなかった。

「ずいぶん時間かかったな。傷病者の受傷形態、重症度の選別を見て来いって言われただけだろ、大丈夫か」

 大丈夫か、というのは、「わかっているのか」ということだろう。小田原さんの、やれやれという口調がそう感じさせた。

「傷病者の状態を観察して隊長に報告しなくちゃダメだって言っただろっ。何のために分かれたんだよ。全体の中から重傷度の高いものを選別し、それから処置していかないと。いちいち観察するたびに処置をしていたら選別なんかできっこないだろうさ。情報を整理して、それから搬送先病院の選定を依頼するとかしないと。お前は一台分の二人しか観察していないだろう。残りはどうするつもりだったんだ。事故車は五台だぞっ」

「は、はあ。すいません」

「ま、ほとんど観察は終わったけどよ。あとは脱出不能の救出待ちだ」

 なにせこういう状況は初めてだったので、それ以上言われることはなかったが、それにしてもキツイお言葉をいただいてしまった。基本的なことをすっかり忘れてしまっていたのだった。今この場で傷病者の観察をしているのは我々だけなのに、効率よく要領よく動けないでどうするのだ、ということなのだった。俺はひたすら首を垂れるしかなかった。それでもほとんどが軽症であったということで、俺は少し胸をなでおろした。

 視界の端をちらちら動くものがあった。振り向くとまどかが視界に入った。今度は手にカメラを持っている。おおかた現場の写真を撮って、報告書にでも添付するのだろう。指揮本部もいろいろすることがあって忙しい。

 そして、こちらはこちらで、一番大事な、そしてやっかいな傷者がこれから救出されるのだ。これからがメーンイベントなのだった。

 残っている傷者は二名、残っている救急隊もわれわれを含め二隊だけ。ちょうど一人ずつ搬送すればおしまいになる勘定だが、扱う傷者の重症度は、今回の事故では最も重いはずだった。

 雨は白衣の上からじっとりとしみ込み、それが汗と入り混じり、なんともいえない生温かさが身体全体を包み込んでいる。

 俺たちは、菅野隊長の「救出されるまでストレッチャー前で待機」という命令に従った。

「本部には既に搬送先を選定依頼してあります。どちらも救命センターです。収容しましたら無線で確認してください」と、菅野隊長が、傍らにいるもう一隊の救急隊長に言った。

 傷病者の状態を把握していないのに、どうして医療機関の選定を依頼できたのだろうかという疑問が、俺の中で起こった。通常は、事故形態、受傷部位とその程度、バイタルサインが把握されていないと、搬送先は選定できないはずなのだ。性別、推定年齢ぐらいはいえるだろうが、いったいどんな内容で報告し、選定を依頼したのだろうか。バイタルサインなど、ほとんど把握できていないはずなのだ。

「出たぞ。救出だっ」

 誰かの大きな声が響いた。それに反応して救急隊員が駆け寄る。

 菅野隊長は、携帯電話でどこかに連絡をはじめた。

 運転席からの救出だった。顔面は血で覆われている。黒っぽいジャケット、髪は短い。しかしスカートをはいていたので女性だとわかった。三十歳位だろうか。

「こっちも出たぞっ」

 ゆっくり、ゆっくり、という菅野隊長の声が、やけにはっきりと響いた。レスキュー隊が男性を救出したことに対する言葉だった。あせってしまい、もし救助者を落下させてしまったりしたら、それこそ一大事だ。

 取り巻きは皆、無言で見守るだけだった。

「いよいよ俺たちの出番だぞ」

 小田原さんの〈俺たちの出番〉という言葉に俺は武者震いが起きた。

 俺は小田原さんにリードされ、ストレッチャーを救出場所近くまで素早く移動させた。

 口の中が急速に乾いていった。口唇部は雨で濡れているのに、なかなかつばを飲み込めなかった。

 レスキュー隊員二名に、両脇と両足を抱えられ、男性が上半身を現した。先ほどの女性と違い、出血は思ったほどではなかった。若干前額部に確認できただけだった。

 茶髪で髪は長く、シャツの胸元は大きく開いており、金色のチェーンが首に巻きついていた。スーツを着崩しているが、どこか似合っていない。二十代前半か。少々乱暴に救出されたにもかかわらず、反応がない。かなり危険な状態ではと俺の目には映った。

 大隊長と指揮隊長、中隊長、レスキュー隊長も、皆、言葉はない。救出が終わるまで、ただ見守るだけだった。

 さらにもうひとりのレスキュー隊員が腰を抱えた。

 女性はストレッチャーに乗せられ、車内収容されるところだった。

「帝都医大救急救命センター連絡済みですからあ」

 隊長が大声で叫んだ。

 女性を収容途中の救急隊長は、右手を挙げ、応えた。

 少し離れたところで、まどかがカメラを構えていた。あいつは今何を思っているのだろうか。

 オレンジ服の男たち三名に男性は抱えられ、ゆっくりとストレッチャーに横たえられた。その反対側で確保する際、アルコール臭が俺の鼻をついた。

 男は何度呼びかけられても、肩を叩かれても反応しなかった。

 酸素吸入を行いながらの車内収容となった。脈拍は微弱ながらも頚動脈で確認できた。意識はないに等しい。俺は心電図モニターの準備をした。

 大急ぎで、だが、慎重に、俺たちは、そのまま救急車まで移動した。

 わずか数十メートルの距離が、やけに長く感じられた。

「ウチは東日医大の救命センターへ行きますから」

 車まで数メートルの距離で、菅野隊長は搬送先を指揮隊長に告げた。東日本医科大学は文京区にある。

 それにしても、菅野隊長の現場統制は見事としか言いようがなかった。二隊の救急隊は、傷者が救出されてから、ほとんどロスタイムなしでそれぞれ現場を出発することができたのだから。




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