わっしょい男サンド ~男(おのこ)たち、千年の戦い~

@loli-kon999

壱話 謎の格闘大会、男サンド 

「2万31……2万32……ふう」


改造学生服(長ラン)を着込んだ少年は、桁を間違っているんじゃ

なかろうかという数をつぶやきながら腕立て伏せを繰り返していた。


「だいぶ、筋肉に効いてきたな……」


伏していた体をのけぞらせ、無駄にバック転して体勢を立て直した。


筋肉隆々の体はゆうに180cmを超えていて、なおかつ

その美少年・顔面は爽やかさと愛らしさを醸し出している。


筋肉質過ぎる太い腕を組んで、長髪ながら美しい黒髪を

ばさっと靡かせていた。


筋トレ器具くらいしかない殺風景な自室の下方向から、

甲高い声が聞こえる。


「お兄ちゃーーん! TAKESHIお兄ちゃん!」


ガタン


その可愛らしい声の持ち主は、階段を上がり彼の自室のドアを

ノックもせずにぶち開けてきたのだった。


「なんだ、お前か。妹だからってノックもせずに

私の部屋へ入ってくるのは……」


「た、大変なんだよ!」


「ものすごい慌てようだな。何があった?」


「お兄ちゃん宛に、あの超暗黒格闘技団体から手紙が……」


「まさか……ッ!?」


フリフリのドレスっぽい何かを着た小柄な妹の手より

渡された茶封筒(安っぽいな)を、彼は勢いよく破りすてると

そこには安っぽいコピー用紙が入っていた。


「なになに……(完全にコピー用紙じゃん。金ないんかな)」


「……」


「な、なんて書いてあるのお兄ちゃん」


「……お前が読んでみてくれ」


「(漢字読めないんだな……)」


――親愛なるTAKESHI君、キミの噂はかねがね伺っている。

最強のゴリマッチョ・高校生であるキミは、栄えある

暗黒格闘技男大会"男サンド"の出場者に決定した――


かなりわけがわからない用語が飛び交っているが、

妹の可愛らしいハイトーンボイスによって一応緩和はされていたということだ。


――無論、これは強制だ。もし断ればキミはもちろんのこと、

キミの大切な妹君のことも、組織をあげて殺さねばならない。

いい返事を期待している。 Mr.E――


「な、なんだと……あの、悪名高い闇の格闘技大会、

どちらかが死亡するまで戦いを繰り返すという男サンドか……」


「どうやら、参加せざるを得ないようだな……」


「お、お兄ちゃん……」


筋肉質な兄は、両手を前にやり震える彼女の頭にそっと

手を添えた。そして美少年・スマイルを出力130%にして


「大丈夫だ。お前の命は私が守る」


「私が戦いに出向いている間、家のほうを守っていてくれ……」



そんな彼のイケメンスマイルを、妹は顔を伏せて見ていなかった。


左手の甲で目のあたりをゴシゴシとやりながら……


「TAKESHIお兄ちゃん、死なないでね…」


と小声でつぶやいた。





―かなり暗い部屋―


電気止められてるんかな、というほど暗い部屋の、

仰々しい高椅子に鎮座するゴリマッチョの姿があった……。


そして彼は肩肘を付きながら


「フッ、TAKESHI。かなりのテストステロンの持ち主とみた。

ワタシの元まで来い」


「どちらが真のアルファメイルか教えてやろう……ファッファッファ……」





つづく

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