瀾(五)

「レコンキスタのレンジャー隊の支援の為、一端、JR久留米駅まで戻ります。空いてるドローンが有ったら、私達の進路の前の様子を撮影してて下さい」

『えっと……Affirmだっけ? この車にドローンが何台か有るんで、その内の1台を飛す。でも大丈夫か?』

 返事の主は……望月だった。モニタ上に表示されたアイコンは、一時協力者用のモノだった。

「どう云う事ですか? 後方支援とは言え、素人を巻き込んだんですか?」

『いや、お前だって、一応は素人って事にしとかないと、後でややこしい事態になるだろ。家族関係と親戚付き合いが崩壊するぞ』

 今度は苹采姉さん。

「どっちみち、今回の件が無事終ったら、今まで秘密にしてた事は、全部ブチ撒けるつもりな上に、全ての原因は、今、行方不明なので、問題有りません。姿を消した誰かさんを悪者にすれば言い訳になる」

『開き直ったな……』

「とりあえず、道路に亀裂が有っても何とか成りますが……見付けたら事前に教えて下さい」

了解Affirm

『待てよ。そもそも、一番デカい問題が有るぞ。……このままじゃ……応援が来てる辺りに佐伯を誘い込めない。……どうする気だ?』

「ちょっと待って下さい……。そうだ……良い手を思い付いた」

『さて、どんな独創的な手だ?』

「佐伯が居る場所まで戻ります。治水、飛び道具と軍刀ををトランクから出してくれ」

「えっ?」

 治水の驚いた声。

『……お前の「良い考え」は、いつも独創的だが、今回は特に無茶苦茶だな』

「応援が到着するまで、佐伯が治水に追い付けなければ良い……なら、佐伯の足を私が奪って、私は、それでJR久留米駅に行き、治水は応援と合流すれば良い」

「無茶苦茶だよッ‼」

「大丈夫だ。これは遠隔操縦が可能だ」

 そう言って私は、チタニウム・タイガーを指差す。

『明らかに……巧く行かん気がするが……無茶苦茶過ぎて、どこに問題が有るか……すぐに指摘出来ん……』

 苹采姉さんは……呆れたような声でそう言った。

「なるほど……代替案は無しですね。じゃあ、私の作戦で行きましょう」

『お前……底抜けの天才か、底抜けの狂人だな……。多分、後者の方の確率が高いが……』

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