瀾(四)

 周囲では怪獣映画か大災害ディザスター映画みたいな事態が起きている。熱線と冷気が飛び交い、水流……いや水竜が宙を舞っている。

「おい、しっかりしろ‼」

 桜さんの強化服の背中の金属製の大型腕が展開し、倒れている通常型グリーンの強化服を着たレンジャー隊員を助け起す。

 強化服の左胸が大きくへこんでいる。肋骨にヒビが入るか折れているのは確実だ。

 その時、後方支援要員の権藤さんから連絡が入る。続いて、仲間の偵察用ドローンが捉えた映像が眼鏡型端末に映し出される。

「その人を動かせますか?」

「どうした?」

「早く、ここを離れないと、大変な事になる」

「いや、十分に大変な事に……」

「今以上にとんでも無い事になります。駅の東口に迫撃砲を設置してる連中が居る」

「はぁ?」

「いや……待て……」

 副隊長ブルーの強化服を着たレンジャー隊員はツッコミを入れようとしたが、どうツッコんで良いか判らないようだった。

 だが、次の瞬間……久留米駅の向こう側から何かが放物線を描きながら飛んで来た。

「う……うわああああああッ‼」

 治水の叫びと共に、大量の水が上空で氷の壁となり、砲弾を防ぐ。爆発、そして轟音。

 しばらく、耳鳴りがした。

「無事……なのか?」

「あの人が……何かしたせいみたい……」

 治水は佐伯を指差す。氷の壁も迫撃砲弾も消えている。そして……。

「ま……まさか……」

 私達の上空だけ雪雲が消えている。……冗談じゃない。治水が作った「氷の壁」を水蒸気に変え、その衝撃波を上に誘導し、爆発の衝撃波を打ち消した……らしい。

 マズい……。これほどの力だとは……。これを攻撃に使われたら……「神」と戦う為の「鎧」である「護国軍鬼」の装甲さえ紙同然だ……。

「に……逃げるべきかな?」

「ええ……、それしか無いでしょう……」

「なら、どっちに逃げる?」

「東口の方には武装集団が居て、南の方からも別の武装集団が来ています。とりあえず……味方は……」

 私は北の方を指差した。

「味方って……誰だ?」

「『世界を護る者達ローカパーラ』を名乗る……違法自警団です」

「お前、一体、何者だ? あと、警察と違法自警団が手を組むのか?」

「議論してる暇は無いでしょう。車は動かせますか?」

「この水でもギリギリ動かせる……と思う……」

「判りました。治水、望月、乗れッ‼」

「の……乗れって……」

「話は後だッ‼ 急げッ‼」

 レコンキスタのSUVは私達を乗せて発車した。背後の大騒ぎは治まりつつ有るが……。

 続いて、2回目の轟音。

 しかし……。

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