第37話 戦闘開始
♢ ♢ ♢
「羽川先輩大丈夫っスか?」
「ええ……勿論よ……」
「明らかに息が上がってるっスけど……」
「はぁはぁ……羽川先輩っ!! 神楽坂さん!!」
良かった……追いついた……。
「宮本くん!?」
「姉御の旦那!? け、怪我は大丈夫なんスか!?」
「大丈夫です。……行きましょう。でも、このまま行っても、足手まといになるだけだと思うので、何か武器を作ってから行きましょう」
「武器……?」
「確か、この近くにコンビニがありましたよね?」
「あるっスけど、コンビニに武器なんて……」
「僕に、一つ考えがあります」
♢ ♢ ♢ ♢ ♢
「小黒……お前は、不良をやめたんだろう? 本当にそれでいいのか?」
小黒と行動をともにしながら、あたしは小黒に問いかける。
「……あぁ」
「なんだか変わったな」
「変わったのは……俺だけじゃないと思うが……というか、そんなことより、ほら見えてきたぜ。……まさか、こんな場所があったなんて知らなかったなぁ」
「こんな場所、まるでない……」
「まぁ、趣味の悪いあいつが選びそうな場所だな」
──これは、明らかに狙ってこの場所を指定している。ここは、あたしの学校からかなり離れているというわけではないが、こんなところに人がいるのかと思うくらいの人気のない場所である。古びた建物。さらには、タイヤや、何かの瓦礫が転がっている。何か昔、使われていた施設なのだろうか。
こんな場所に誰かがいるだなんて、想像もつかない。
「しかし……不気味だな」
「あぁ……誰もいない」
場所が間違っているのか……
あたしはメモに書いていた場所をもう一度確認する。都宮倉庫。
いや、間違いない。ここだ……。
「なぁ、神崎、やっぱりおかしいと思わねぇか?」
「そうだな……」
一見すると何もない倉庫だが……。
「ここに、人が通ったような足跡がある……」
「あぁ、それにこの倉庫は死角になる場所が多い……集団で襲うのにはうってつけの場所だ。
こんな良い場所を犬飼が、たった一人で使うとは思えないよなぁ……。つまり、犬飼一人ではないってことだ。なぁ、もう既にいるいるんだろ? 犬飼」
「……ぎゃっひゃっひゃっひゃっひゃっ! 御名答!! 察しがいいじゃねぇか!! 小黒、久しぶりだなぁー!!!!!!!」
柱の影から、おそらく犬飼であろう人物
が現れた。
「できれば、俺はお前に会いたくなかったんだが?」
「そうかいそうかい!! まぁ、とにかく死ねやああああああああ!!!」
ザッ。
隠れてたのか……。それも一人や二人ではない。恐らくは、20人程度。この人数を集められる犬飼に対して、あたし達は、
本当にまずい奴らと関わってしまったと
自覚する。
「ルールは守ろうぜええええ!? 俺は神崎と小黒がてっきり戦ってると思ってきたんだがなあああああ!? 仲良くしやがってよおおおおおお!!」
「あ? お前にルールもクソもねぇだろうが、俺らをハメただけじゃ飽き足らず、こんだけの人数引き連れてきやがって」
「あぁんんんん!? 舐めた口きいてんじゃねえよおおおおおおお!! やっちまえお前らああああ!!!」
『ぐっ……』
「……あ? なにやってんだてめぇらさっさといけえええええ」
『進めません……前に変な奴が……!!』
『犬飼さん、こっちもです!!』
「変なやつ? ……まさかテメェの仕業か!!!!」
「あ? 俺は最初から一人で来るなんて言ってないぜ。勿論、俺の仲間だ。
来てくれて助かるぜー。お前ら。
ただ、今回は相手に傷をつけるな。
変に問題を起こすと大変だからなぁ」
小黒がよんだのであろう仲間たちは、
犬飼の手下の前に立ち塞がっている。
「……おいおいおいおいめんどくせぇことしてくれるなぁぁぁぁぁぁ!!?」
犬飼が小黒に殴りかかった。
小黒は、後退しながらもなんとか、犬飼の拳を掌で受け止めて、言う。
「おいおい俺は神崎に負けるまでは
これでも強かったんだぜ? テメェみたいな卑怯者とは戦いたくなかっただけでな!!!」
「あぁ!!? テメェ、おれさまをこけにしやがったなぁ、テメェら!! やっちまええええええええ!!!!!!」
その言葉を合図に、
ついに、犬飼グループと小黒グループの
喧嘩が始まるのだった。
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