第26話 不良少女とBBQ!?(前編)

 夏も、もう終盤、季節的にはもうすぐ涼しい季節が訪れるはずであろう。

 だが、太陽は、次の季節にさせてたまるかという最後の抵抗とばかりに、これまで以上に日差しを放っている。

 きっと今年の太陽は、プライドが高いのだろう。


「はぁー、生き返りますね」


「あーうん。涼しい」


 僕と花さんは、

 冷房が一番効いている図書室へ

 いた。いやまぁ、冷房が効いていてもいなくても毎度のことなのだけれど。


「うー、冷房最高っスううううううう」


「神楽坂さん、だらけてないで勉強しなさいってば!」


 暑さにやられながら、机に顔を擦り付けている神楽坂さんに対し、キリッとした態度で

 注意を促す、羽川先輩。


「うっ……ここにも暑苦しい何かがいるッス」


ユサユサと羽川先輩に体を揺らされながら、

口を垂れている。


「だれが暑苦しい何かよ! 私は委員長!!!全校生徒の規律と服装を守る役目を果たしているのよ!!」


「今更、自己紹介しなくても、もう全員知ってるッスよ……」


「だって最近私の出番すくな……」


「はいそこまでッス」


 唐突に片手で口を塞がれる羽川美玲。


「(モゴモゴ!!まだ終わってないのに!!)」


 そう、今日は、花さんと僕だけでなく、

 羽川先輩と神楽坂さんもいた。

 全員が揃うのはなかなか珍しいことだ。


「もう夏も終わりかぁ……」


「あら、宮本くん、なんだか寂しそうね」


 ふと、軽く呟いた言葉に

 羽川先輩が反応したので、

 少し言葉に詰まりながら、返答する。


「え、いや、なんか暑いのは嫌いですけど

 なんかちょっとこのまま終わるのは、寂しい気もするなぁ……と唐突に思いまして」


「なるほどねぇ……言われてみれば確かにそうね、体育祭が終わってからこれと言った夏のイベントはしてないものね」


 特に、何か考えて

 呟いたわけではないのだが、

 思った以上に、

 共感してくれているみたいだ。


「昴は、どこか行きたい場所でもあるのか?」


「え……!?」


 そう言われるとあんまり出てこないなぁ。

 海は行ったし、後は花火大会とか……?

 でも、確か地元の花火大会は

 今年は花火師が居ないとかで中止になったんだよなぁ。

 うーん。どうしたものか。


「じゃあ、何か4人で何処か行くのはどうッスか!! 自然の中で、鍛えれば私はもっと強くなれるッス!! 熊とか倒すッスうううう!!!」


 机に身を乗り出し、目を輝かせながら、元気に発言する

 神楽坂さん。


「私たちだけで、そんな熊がでる危険なところに行けるわけないでしょうが!!……ん? でも……」


 羽川先輩は、顎の下に手を当てながら、

 何か考えている様子だ。


「ん、どうしたッスか委員長。

 何か良い場所でも見つかったッスか?」


「ええ。キャンプなら私にいい案があるの。日程を調整して連絡するから私に

 任せてくれないかしら」


 ♢♢♢



「お兄ちゃん、何処か行くの?」


「うん、キャンプに行くんだ」


「寂しいなぁ……早く帰ってきてね!」


「勿論だよ」


 妹の頭に手を当て、優しく撫でる。


 それにしても羽川先輩、良い案があるから、この場所に来いって自信満々に

 地図渡されたけど

 どういうつもりなんだろう。


 ♢♢♢


 その羽川先輩が自信満々だった理由は、その場所に行くと、すぐに分かった。


 これでもかと主張する程の大きな家。綺麗な煉瓦造りの外壁に囲まれた広い庭園。そして、その庭園には、調理道具が、一式並べてあり、

 見るからに高価そうなものばかり。

 さらには、何に使うのかよくわからないが

 とにかくハイテクそうな設備の数々。


「「「………」」」


「どうしたのよ、みんな黙って」


 委員長は、首を傾げている。


「いや、まさかとは思うんですけど、

 ここって……」


 恐る恐る、羽川先輩に尋ねる。


「ええ! 私の別荘よ!!」


 おいおいおい……。

 まじかよ。


「これは……流石に凄いな……」


 花さんも、羽川先輩の別荘をみて

 驚いている。


「これぞ、お金持ちの集合体ッス……!」


「さぁ!! キャンプを楽しむわよ!!」

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