第14話 ついに体育祭 前半

「はぁはぁ……」


体育祭の前日まで、僕らは時間を見つけて、ランニングの練習を重ねていた。


「よし、今日はここまでにしておこうか、明日は本番だからな」


「はい!」



 ♢♢♢



『レディーイィィィィィスアンドジェントルメエエエエエエェェェェェェン!!さぁ始まりました!! 我が高校の一大イベント

 学年なんて関係ない!! 毎年、赤vs白の戦いが行われる熱い!! 熱い体育祭!! 今宵は一体どちらが勝つのかああああああああああ』


……なんかテンション高いな実況の人。


『実況は私、角谷徹かどたにとおるが努めさせていただきます!! それでは、最初の種目から参りましょう!! 最初の種目は……』


 えーと、僕の出るところは……、えーと、

 あったあった。

 学年リレーは、最後から2番目か。

 最後じゃないだけ、まだまし……


「……じゃなかった」


 右側に、学年リレーは、

 ポイント2倍と書いてあるのを

 見つけてしまった。見なければ良かったな……。

 ますます緊張してきたじゃないか。


「まぁ、個人種目は後半か……じゃあ、前半は休憩って感じだな……ってあれ? あの後ろ姿は……」


 思わず、駆け寄り、声をかける。


「あー、昴か、体調は大丈夫か?」


「花さん、おはようございます。

 まぁ、緊張はしてますけど、体調は大丈夫って感じですかね……、それにしても僕ら、同じ赤組だったんですね」


「あー、そうみたいだな、あたしも練習に夢中だったから聞くの忘れてたよ、お互い頑張ろうな」


「頑張りましょう!」


 花さんと同じ赤組か。

 なんだかそれだけで、心強い気がする。


『続いての種目は、2年生全員によるダンスです!』


「あー、あたしの番だ。じゃあな、昴、またあとで」


「は、はい!」


 花さんは元気よく、走り去っていった。

 さて、僕も心の準備をしておかないとな……。


 それから時間が経ち、体育祭も終盤に近づくと、会場はより盛り上がりだした。


 点数は、赤組が680点。白組が670点と

 接戦である。


『赤組がんばれええええ』


『白組いけえええええ』


 その為か、声があちこちから聞こえだす。

 生徒席から、保護者席まで。


 そんな中、僕の心はバックバクだった。

 点数的にも、プレッシャーがより、かかりだす。


『お次は、本日の目玉の一つうううう!

 赤白対抗、学年リレーだああああああああああああああ!!』


『わあああああああああああ!!』


「凄い盛り上がりだ……ついに始まってしまったか……」


 僕が走るのは、最後。つまりは、

 アンカーである。

 勝負は全て、アンカーで決まってしまう。

 その為か、できるだけ、差をつけてバトンを渡してもらいたいというズルイ願望も

 出てしまうところだが……。いやダメだ。

 あんだけ練習したんだ。頑張ろう。


『さぁ!! いよいよ始まります……!

 赤と白一体どちらが勝つのか!!

 現在ポイントは、赤組が、690点!

 白組680点です! 点差はわずかに10点差!

 それにこの学年リレーで勝ったものには、

 50点が贈られます!!』


 最後の種目、騎馬戦のポイントも同じく50点。つまりは、この学年リレーで制してしまえば、最終種目の騎馬戦がどうであれ、

 無条件で赤組の勝ちとなる。

 より一層、赤組の声も聞こえ出す。


『赤組! 決めちまえええええ!!』


『やっちまえええええええ』


「ふう……」


 とりあえず、一息つく。

 その息とともに。

 スタートを告げる銃声が鳴り響いた。


 パーン!


『おっとおおおお赤組速いぞおおおお!!」


「よし!」


 序盤は赤組のリードだ。既に半周分くらいの

 差がある。


 ──だが、白組も負けてはいなかった。


 素晴らしいバトンパスで、グイグイと赤組を追い上げ、僕の番が来る頃には、反対に半周差をつけられていた。


「まずい……」


 そのまま、僕はバトンを受け取った。


 パシィッッッ。


 ついに、バトンを受け取り、

 いざ走りだす。


『ついにアンカー同士の対決だあああ!!

 アンカーは、3周!!赤組も逆転のチャンスがあります!!』


 だが……。


「くそ……距離が縮まらない!!」


 白組のアンカーの背中が、

 かなり遠く見える。

 必死に追うが、一向にその距離は縮まらない。むしろ離れていく。


『おっと、白組のアンカーがグイグイ突き放していくぞおおお!!これは赤組体力がつきてしまったか!?』


「くそ……追いつけない。やっぱり、無理なのか……」



「昴!!」


 何故か、一人の声がはっきりと聞こえた。


「花……さん?」


「昴!! フォームが崩れてる!! 練習を思い出せ!!」


「フォーム……?」


 はっ。

 気がつくと、相手のアンカーに気を取られていたのか、身体が前のめりになり、

 フォームが崩れていた。


「そうだ……、練習を思い出すんだ。

 練習通りに」


『おっとおおお!!ここで赤組息を吹き返したぞおおおお』


 練習で、やったことを活かすんだ。

 花さんの思いも背負って…!!


『赤組必死に食らいつく!! 白組も徐々に体力が尽きている!! 勝負はラストスパートだ!!!』


「うおおおおおおおおおお」


 パーン。


『ゴール!!!!!……勝ったのは!!

 白組!! 白組の勝利です!!!

 赤組も頑張りましたが、白組が勝ちました!!』


 --負けてしまった。


「あんなに練習したのにな……」


「昴、よく頑張った」


 僕の頭の上にタオルが多い被さる。

顔を上げると、花さんが、微笑ましい顔で

 僕を見つめていた。


「花さん、すみませんあんなに練習付き合ってもらったのに、負けちゃって……」


「……気にするな、昴、見てみろ周りを」


 周り……?

 辺りを見回すと、赤組側の陣地が

 立ち上がって、盛り上がっていた。


『赤組のアンカー!!よく諦めなかった!!!良かったぞおおお!!!』


『諦めず、楽しい試合をありがとなあ!!』


「……!! 負けたのにどうして……」


「確かに、勝ち負けも大切なことかもしれないが、昴が諦めずに最後まで走ったからこそみんなが礼を言ってるんだとあたしは思う」


「花さん……」


「まぁ、途中で諦めてたら半殺しにされてたかもな」


「!? ちょ、ちょっと脅かすようなこと言わないでくださいよ!!」


「ふふ。冗談だよ。さて、あとは、あたしの番だな。任せな、勝ってくるから」


 そう、クールに言いのける花さんは

 やっぱり、頼もしくみえた。





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