懺悔其の二十八 再び後輩(バカ)は来る!

 

「レナさん!」

「大変です!!」


 ドタドタと騒がしく特攻服を着た二人の少女が懺悔室に入ってきた。


「ん? なんだシホとミサキじゃないか? いつも通りダセー特攻服着てるな」

「そんなにダセーっすか? イケてると思ってたんっすけどネ」

「私もダサいような気がしてきたよ」


 てか、なんでこいつ等また来てるんだよ。


「で、何? また懺悔でもするのか?」


 大変って言ってたけど知った事じゃない、また懺悔させてケツにキックして帰そう。


「いや、あの後アーシのお尻ヤバかったんすよ……レナさんマジでキックするんだもん」

「懺悔だからな」

「私もちょっと自信失くしましたよ」

「いや、だってミサキはミサキでダサイもん」


 まあ、二人ともダサイわけだな。


「てか、今日こそ言わないと!」

「あ、そうそう、レナさんいい加減キョーコさんの相手してくださいよ」


 キョーコ誰それ? 知り合いにいたっけかそんなの?


「キョーコって誰だよ」

「うちらのヘッドっすヨ」

「まあ、キョーコさん今日は補習受けさせられてますけど」


 あー、キョーコねアイツね。前にワンパンで沈めてやったアイツね。

 てか、補習って……え? アイツ学生だったの?


「まて、補習ってキョーコってアイツ幾つだよ!」


 アタシは二人に聞くと。


「ミサキあんたキョーコさんの年齢知ってル?」


 シホは知らないようだ。


「えーっと、確か今年で高校六年生だって言ってたから二十一歳くらいじゃない?」


 え? 何年留年してるんだ? アイツそこまでバカだったか?


「あはははははは! え? 高校六年生? 小学じゃなくて高校で?」


 ヤベー! ないわーアタシだったらガッコ辞めてるよ。スゲーなアイツ根性だけは凄いわ。


「笑いすぎですよレナさん」

「キョーコさんも最近焦ってるんすヨ」

「アタシの相手したけりゃ、卒業してからにしろって言っとけ」


 ようするに相手する気は無いってことだ。

 バカ二人の相手していると扉が再び開いた。


「レナさーん、いますか?」


 おっと雅代が来たし、アタシはお勤め中なんだがなぁ。

 アタシの存在を確認した、雅代は嬉しそうにこっちに来た。


「いたいた、良かった。今日は調理実習でクッキー作ったから持って来たんですよ」

「へー、それでアタシにくれるのか。ありがとさん」


 アタシが雅代に礼を言ってると、シホとミサキが雅代を見てポカーンとアホヅラを晒していた。


「なんだお前等二人ともマヌケな顔して」


 アタシに言われて二人ともハっとして正気に戻ると、シホが喚いた。


「ちょっと、レナさん! なんでこんな所にサカマサがいるんすカ!?」

「サカマサ? なんだその魚屋みたいなの」

「サカマサですよレナさん! 下り坂の坂下雅代ですよ!」


 ミサキも興奮気味に話している。


「うっはー! すっげーモノホンだ顔ちっさ、カワイイー」

「おい、シホ汚い手で触るなよ雅代が嫌がるだろうが」


 ミサキのヤツがウェットティッシュで丁寧に手を拭いていた、アイツ特攻服にあんなカワイイポーチ付けてるのかよ……しかも中身がウェットティッシュって律儀な奴だな。


「雅代ちゃん握手してください!」

「あ、ミサキずりーっすヨ」


 バカ二人の勢いに飲まれてた雅代もそこは慣れてるのか、スマイルになっていた。


「あ、はい。いいですよ」

「うわー、感激です!」


 雅代と握手して感動しているミサキ、もはや単なるミーハー女子高生じゃねぇかよ。


「ミサキ! アーシにもウェッティー寄しなヨって。勝手に使うし」


 シホも手を拭いていた。こいつ等結構ミーハーだな……族に命張ってるとか言ってたのに、それはそれコレはコレってやつか。


「アーシとも握手お願いするっス!」

「ええ、いいですよ!」

「うはー!雅代スマイル付きの握手とか……感激すぎっすヨ、あとでチュイッターでつぶやこ」

「お前等、雅代のファンなのか?」


 シホとミサキは二人並んで手を後ろに組んで並ぶと。


「「大ファンです!!」」


 ハモってた、綺麗にハモってた。


「そこまでなのか」

「……あはは」


 アタシは二人の今までで一番気合の入った返事に呆れていた、そして雅代も苦笑いをしていた。


「いやー感激っすヨ」

「キョーコさんの補修に感謝だね」

「ミサキ! アレ用意するっすヨ」

「アレ?」

「だーアレだヨ」


 二人の意思は通じ合っていないようだ、アレで分かるのは熟年夫婦だけだろ。


「アレって言ったらスーパー自撮り棒だヨ」

「あぁ、アレね」


 ミサキは走って自分たちの単車に荷物を取りに行った。

 少しするとまた走って戻ってきた。


「「雅代ちゃん一緒に写真撮ってください」」


 またしても二人でハモりつつ綺麗なお辞儀をしていた、息が合ってるのか合ってないのかワカランヤツ等だ。


「あー、えーっと」


 雅代がどうしていいか分からずアタフタしている。


「雅代、すまないけどこのバカ達と写真撮ってやってくれないか? アンタほどの売れっ子の写真撮影なんて安くは無いと思うけど、このバカ共はどうやら本当に雅代のファンみたいだしな」


 アタシがそう言うとシホとミサキが無駄にいい笑顔になってるし。雅代もまんざらじゃないようだ。


「わ、分かりました、一緒に写真撮りましょう」


 雅代を真ん中にシホとミサキが左右に分かれる。

 しかし撮影場所が懺悔室ってどうなんだ?


「アタシが撮ってやろうか?」


 アタシがカメラというか、シホのスマホを寄こせという仕草をすると。


「何言ってんすか! レナさんも来るんすヨ!」

「アイドルと伝説のヤンキーとの写真撮影ってすごくない?」


 最悪の組み合わせな気もするぞそれ……日の当たるアイドルと日陰者の不良だぞ?

 しかし、二人はそんな事どうでもいいと言わんばかりに手足をバタバタさせて喜んでいた、喜び方がちょっと怖い……


「わ、わかったから落ち着け」

「早く来てくださいよレナさん!」

ハリーハリーハリー早く早く早く!」

「レナさんと一緒に撮影? わ、わたしと?」


 何故か雅代も嬉しそうなのだが?

 仕方ないのでアタシも向かうと、扉がまた開いた。


「なんか今回は賑やかだね、仔猫ちゃん達の声が聞こえてきたよ」


 リナのヤツが騒ぎを聞いてやってきた


「なんだリナか」

「はは、つれないねレナ」


 そしてリナは雅代とシホ、ミサキに目を向けると。


「なんだい、可愛らしい仔猫ちゃん達が三人も来てるじゃないか」

「あ、リナさんこんにちは」

「ああ、雅代仔猫ちゃんもこんにちは」


 シホとミサキはリナをまじまじと見ると、またも大騒ぎ。


「なんで、こんなところに元蟹組の聖方里菜さんがいるんですか!」

「マジすか? モノホンのリナさんっすヨ!」


「リナ、お前本当に人気あるな」

「はは、活動期間が短いのに何故だろうね?」


 優雅な足取りでリナはシホ達の方に歩いていく。全く本当にこういうことはサマになるな。


「「リナさん! ファンでした!!」」


 またもハモる二人、今日はやたら息が合ってるなアイツ等。


「丁度レナさんと雅代ちゃんと記念写真撮るところだったので、リナさんも一緒にどうですか?」

「ミサキ! バカ! おバカ!! どうですか? じゃねっすヨ!」

「ああ、そうか。リナさん是非とも一緒に写真撮らせてください!」


 流石のリナも苦笑いしつつ。


「仕方ないね、仔猫ちゃんの頼みじゃ断れないな」


 そう言ってリナも一緒に撮ることになった。

 シホがスーパー自撮り棒(たんなる自撮り棒)を使ってスマホのカメラをセットし掛け声をかける。


「では撮るっすヨ! いちたすいちは?」


 お約束の掛け声だな。アタシとリナ、雅代は笑顔で構える


「「平和!!ピンフ」」


 パシャという音とともに写真が撮られたが……掛け声おかしいだろ!


「お前等! なんでいちたすいちが平和ピンフなんだよ!」

「え? 普通は平和ピンフっすヨ」


 ああ、こいつ等だから仕方ないか……

 雅代とリナも呆れていた。


「うおおおお! こうしちゃいられねぇっすヨ」

「シホ! 急いでロッチリアに向かうよ!」

「ああ、急いでインスコグラムにアップするっすヨ!」


 シホとミサキはアタシ等三人向かってお辞儀をする。


「「本日はありがとうございました!」」


 そう言うと二人はバタバタと走って出て行った。


「なかなか騒がしい仔猫ちゃんだったね」

「でも、なんか楽しそうで私まで微笑ましくなっちゃいましたよ」

「まぁ、バカなだけだよ……あれでもレディースなんだよなアイツ等」


 結局、何が大変できたんだあの二人? まあいっか。

 アタシらはこの後、雅代のクッキーでお茶の時間にしたのだった。


 ――

 ――――


 後日、バカ二人が再び来て、あの写真が五千イイネされたと自慢しに来たので、ケツキックをかましてやったのだった。

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