懺悔其の十四 後輩(バカ)は来る!

 

「レナさん!」

「大変です!!」


 ドタドタと騒がしく、特攻服を着た二人の少女が懺悔室に入ってきた。


「ん? なんだシホとミサキじゃないか? 相変わらずダセー特攻服着てるな」

「ダセェって酷いっすね、あたしらコレに命張ってるんすヨ」

「そうですよ」


 金髪に染めてソバージュにしてるのがシホ。

 茶髪をポニーテールにしてるのがミサキというアタシの二つ下の後輩だ。


「てか、お前らなぁ。アタしゃもう不良なんて辞めたんだよ、学校もちゃんと卒業して今はちゃんと教会で働いてるんだから、くだらねぇ用事で来るんじゃないよ」


 アタシはシホとミサキにそういってやる、こいつ等が大変だって騒いでても大抵は実に下らない内容な事ばかりだしな。


「あれ? 不良やめたの本当なんすネ?

「マジですか? あの話本当だったんですね?」


 アタシの恰好見りゃわかるだろうが、ついでに言っておくがアタシは族じゃないからあんなダサイ特攻服は着てないぞ。


「本当だよ、お前らここは懺悔室なんだから懺悔していけ。お前等バカだから懺悔すること多いだろ」

「いやいや、レナさんワタシとシホには懺悔するような事はないですよ」

「そっすヨ! ところで懺悔ってなんですカ?」


 アタシとミサキがシホを見る、コイツやっぱバカだわ。


「シホ、お前懺悔の意味もシラネーのにミサキに同意してんじゃねぇよ」

「シホ、アンタ想像以上のバカだったんだね」


 アタシとミサキに言われたシホがキーと言った感じで怒りながら


「じゃあミサキは懺悔が何か知ってるのかヨ」

「知ってるよ、ヘタ打ったりした事を告白して反省する事だよ」

「何で意味しってるんだヨ! 裏切者!」


 なんか漫才始めやがったな……これ長くなるから止めないと


「うるせぇ、漫才するなら帰れ。アタシは仕事っと、お勤め中なんだから懺悔しないなら帰れよ」


 アタシがドスを効かせて二人にそう言うと、二人は背筋を伸ばして返事をする。


「わ、わかりました! 懺悔させていただきまス」

「私も懺悔します!」

「よし、まずはシホお前からだ」


 アタシはどう考えても懺悔の宝庫であろうシホを指名する。


「わかりました! こないだ小学生からお菓子を奪い取りましタ!」

「うわ! シホせっこそしてダッサ」

「シホ、お前マジでくだらねーことやってんな! 歯食いしばれ」

「えー? だって小学生のくせに羽黒庵のタイ焼き食ってるんですヨ!」

「いいから食いしばれ!」


 アタシの言葉にシホは目を瞑って歯を食いしばるとアタシはシホに目掛けて。


「闘魂注入!!」


 そう言ってビンタをかます、バッチーンと乾いた音が鳴り響くとシホは頬を押さえてうずくまる。


「――っつー」

「うわー痛そう」

「次! ミサキ」


 シホの姿を見て背筋を伸ばすミサキ。


「えーっと、ガッコの花壇の花やり係をバックれました!」

「……あー、うん。お前、なんかカワイイよな、そのショボさが」

「え?ショボかったですか?」

「うん、ショボい」


 ミサキは何でヤンキーというか族やってるんだろう? さてまたシホだ。


「はい、シホ二回目だ」

「えーっと……こないだスーパーマルトクのコーラのペットボトル全部振っておきましタ!!」


 コイツ、地味に洒落にならねぇことしてんな、てかコイツもなんでこんなにショボいのに族やってんだ?

 でも、それはそれこれはこれなんで。


「テメェ、それ割と洒落にならんぞ!! ケツをこっちに向けろ!」

「えー?またッすカ?」


 アタシは容赦なくシホのケツにタイキックを食らわす、これまた良い音をしてシホはケツを押さえながら床で転げまわるる。

 そして、アタシはミサキの方を向く。


「スイマセン! 実は先日のお弁当なんですが調子に乗ってキャラ弁作ったはいいんですが、その後急に恥ずかしくなって母親が作った事にしてしまいました!」


 アタシはミサキの肩に手を置くと静かに左右に首を振った、何のキャラ弁作ったのか気になったがそこは敢えて黙っておこう。


「え? やっぱダサイですか?」

「うん、お前たち方向性違うけど二人ともダサい」


 アタシにそう言われショックを受けたミサキはうなだれていた。

 不思議とミサキはワルに憧れてるんだよなぁ、なんでだろ?


 こうして何順かバカな懺悔をさせていく。シホはくだらないイタズラの告白ばかりではあるが、何気に結構洒落にならないイタズラも多く何度か闘魂注入をしてやった。

 ミサキの方はなんというか微笑ましい。

 こいつ等本当になんで族やってるんだ? 謎で仕方ない。


「よし、最後に大きな懺悔しろ」

「わかりましタ! 実はミサキの最近できたカレシを横取りしましタ!」

「え?」

「うわー……」


 シホ、最低だわ。ミサキなんて泣きそうな顔でシホ睨んでるし。


「シホ! お前が犯人か!! 昨日タっくんからルインで別れようってメッセージ来たんだぞ! まだ手をつないだだけなのに……」

「いやー、メンゴメンゴだってタっくんワタシのモロ好みなんだもン、しかもサー、二人とも初心すぎてて見てるコッチが恥ずかしいんだヨ」


 シホいくらなんでもそれは酷いぞ、ホイホイついていく男も男だな。


「シホ……」

「え? なんすカ? 懺悔してるじゃないですか」

「お前本当にアホだな、ミサキに殺されるぞ」

「あー、えーっと、そのー」


 シホは慌てた表情でミサキの方を見ていた。

 ミサキは笑顔でそして今までで一番族っぽい表情でシホの襟首をつかむ。


「シホー、あっちでゆっくりお話ししましょう。ええ、拳で語り合いましょうね?


 そう言いながらシホを引きすって懺悔室の扉に向かっていく、そしてその途中でミサキはアタシの方に向きなおし。


「レナさん、ありがとうございます! タっくんの別れようって話の真実が分かりましたんで感謝します」

「あ、あぁ……お手柔らかにね」


 そう最後に言ってミサキとシホは懺悔室から出て行った。

 ヤッベ、アタシも少し怖かったぞミサキの顔……まあ、シホは自業自得だよな。


 あと、大変だって言ってたけど結局聞かず終いだったなぁアイツ等、まあもっと大変な状況になっちゃったし別にいっか。

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