サンタクロースとサンタクローム

T_K

本物のサンタになる為に

「わしの名前はサンタクロース。


皆さんが絵本などで良く目にするあのサンタである。


職業は勿論サンタクロース。


魔法のおもちゃ工場を動かして、来るべき12月24日に備えておる。


今日は相棒のトナカイ、ルドルフと新しいおもちゃ工場を見に行く予定じゃ」



「俺の名前はサンタクローム。


一応サンタだぜ?


職業はデイトレーダー。


パソコン3画面を使って、その日その日で株のやりとりをするのが仕事。


ま、魔法で、自動的にやり取りさせてるだけだけどさ。


ん?12月24日?


あぁ、ちゃんと準備してるよ。Kumazonで。


お届け日指定出来るし、配送料も安いしさ。


ワザワザ届けに行かなくても、世界中にプレゼントを送る事が出来るなんて。


便利な世の中だよなー。


今日は新作おもちゃの発表会に招待されてたんだけど、


行くの面倒だからネットで見るよ。コーヒーでも飲みながら」



「おぉ。ルドルフ、久しぶりじゃな」


「あ、サンタクロースさん、ご無沙汰してます」


「どうじゃ?新しいおもちゃ工場の様子は」


「一応なんとかなってはいますけど、


最近おもちゃも多様化していて、


おもちゃ工場も魔法だけでは補えなくなってきてるのが現状ですね。


名前と写真を見ても、一体何に使うのか分からないものが多いですし。


そうなると、見た目は完璧でも使えないおもちゃが出来上がるので、


苦労が堪えないです」


「魔法も万能ではないからのう。


魔法使いがそのもの自体を知らんと、どうしようもない。


わしも最近のおもちゃは良くわからんのじゃよ。


あのドヨーンって言うのは何に使うんじゃ?」


「ドヨーンじゃなくてドローンですよ。


ただ、飛ぶだけのものもありますし、


写真や動画を撮れる機能がついてたりもするんですよ」


「ふむ。ラジコンとはまた違うのかの」


「ラジコンと同じで飛ばして遊んだりも出来ますが、


コントローラーではなくて、


スマートフォンやタブレットで動かすものが殆どですね」


「また、スマートフォンか…。


子供達からのリクエストは多いものの、


あれをおもちゃとして受け入れて良いものか、


わしは未だ悩んでおるよ」


「ま、時代は変わるものですからね」


「しかし、24日の夜に届ける事がわしの生き甲斐だからのう。頑張らないとな」


「えぇ。それでこそサンタクロースさんですよ!


あ、ちょっと失礼します。


はい、もしもしルドルフです」


「あ、ルドルフ?俺俺、サンタクローム。


あのさ、ちょっと聞きたい事あるんだけど」


「はい。なんでしょうか」


「時間指定の最終便って21時だっけ」


「えぇ、そうですけど。


もしかして、サンタクロームさん、


また時間指定でプレゼントを送ろうとしてます?」


「ん、ああ。南半球はそうしようかなと思って。


暑いじゃん。届けに行く気が失せるからさー」


「はぁ。あのですね。サンタさんのプレゼントって24日の夜って相場が決まっ」


「固い事言うなよー。


もし子供が先に受け取ったら受け取ったで、


お父さんやお母さんが、


サンタさんから少し早くプレゼントがきたねーとかなんとか


言い訳すれば良いんだしさ」


「もう!そういう問題じゃないんです!」


「あ、もうすぐ新作おもちゃの発表会始まるからまた後でな」


「はぁ。電話切られちゃいました」


「全くサンタクロームには困ったもんじゃな」


「えぇ。いつもこんな調子なんです」


「まぁ、しかしあいつはあいつなりに頑張っとるんじゃろ」


「もう!サンタクロースさんがそうやって甘やかすから」


「甘やかしとるわけじゃないぞ。


あいつにも、サンタがどういうものかいずれ判るときが来る。


それまで、待ってやれんか」


「んもう」



「サンタクロースさんはいつも甘過ぎるんですよ。


大事なたった1日のクリスマスなのに。こうなったら・・・」



「もしもし、俺、サンタクローム。


ルドルフ、今じいさんの家か?」


「いえ、新しいおもちゃ工場で最終確認中です。どうしたんですか?」


「いや、ちょっとだけマズい事になってな。


終わったら俺の家まできてくれないか?」


「あ、はい。わかりました」



「で、どうしたんですか」


「いやな、配達指定日を12月24日の夜にしていたのに、


今確認してみたら、どれも12月25日の夜になってんだよ。


これってさ、今からじゃ何とか出来ないかな」


「うーん。配送手続きはもう済んでますし、


今からじゃ変更出来るのはごく一部だけで、全部は難しいと思いますよ」


「やべぇなぁ。プレゼントの到着、25日の夜になっちゃうよ。


あー、ま、1日くらい、大丈夫だよな。


ほら、プレゼントってさ、いつ貰っても嬉しいもんだろ」


「それじゃあサンタさんの意味がないじゃないですか!」


「良いじゃん、クリスマス中には届くんだし。


それに去年も25日に届いちゃったプレゼントがいくつかあったけど、


特に苦情も何もなかっただろ?


な、この事サンタクロースのじいさんには内緒にしといてくれよな」


「わしに、何を内緒にするんじゃ?」


「げ、じいさん!」


「お前さん、サンタの仕事。まだ判っておらんのじゃな」


「判ってるよ。プレゼントを家に届けるんだろ?」


「そうじゃないんじゃ。


12月24日の夜に届かなかったプレゼントは全て、サンタの魔法が溶け、


親からのプレゼントになるんじゃ。


そのプレゼントは確かに子供が欲しかったものかもしれんが、


特別な力を失った普通のプレゼントにすぎんのじゃよ」


「俺が届けたプレゼントなのに、俺からのプレゼントじゃなくなるのか」


「そうじゃ。そして、その内サンタを信じる子供はいなくなり、


わし等の魔力も存在すらもなくなってしまう」


「そんな!俺、間違ってたんだ・・・。なぁ、じいさん!俺どうしたらいい?


俺はじいさんみたいに、ソリで飛ぶ事は出来ないし、今から一人で全部運ぶなんて」


「ははは。何を言うとる。


今までソリで飛べなかったのは、本物のサンタになってなかったからじゃ。


きっと、今なら飛べるんじゃないかの」


「本物の、サンタ」


「そうじゃ。それに、お前さんにしか出来ない事がきっとあるはずじゃ。


これからどうするか。


後は、お前さん自身が考える事じゃよ。


それから、ルドルフ。


この自体を招いたのはお前さんだろう」


「サンタクロースさん。知ってたんですか」


「お前さんが考える事くらいお見通しじゃ。一体何年の付き合いだと思っておる。


さ、お前さんはクロームの手伝いをしなさい」


「でも、サンタクロースさんのお手伝いは」


「わしなら大丈夫じゃ。さ、早くしないと、24日の夜に間に合わなくなるぞ。


わしは一足先に準備を始める。


クローム」


「はい」


「わしは、お前さんを信じとるからな」


「じいさん・・」




「クロームさん。ごめんなさい。こんな事にしてしまって」


「いや、良いんだ。ルドルフ。俺が悪かったんだよ。


しかし、どうするかな。


24日に間に合わせたいけど、プレゼントの量が多すぎる」


「今からじゃ、二人で届けるのも限界がありますよ。


他のトナカイ達は皆サンタクロースさんのお手伝いで手いっぱいでしょうし。


誰か、手伝ってくれる人がいれば」


「手伝ってくれる・・・。


あ、そうか。手伝ってもらえばいいんだ。


ルドルフ、俺が担当してたプレゼントの中で


2kg以下の軽いものを全部工場で作ってくれ。


重いものは後で俺が直接運ぶから」


「わ、わかりました。クロームさんは?」


「俺が出来る事をするだけ!さ、早く!


間に合わせるぞ。24日の夜届く様に!」




「クロームさん、準備出来ました!」


「こっちも準備出来たぞ!」


「こ、これは!」


「輸送用のドローンだ。これを世界中に飛ばして何とか24日に配り終わらせる」


「で、でも、世界中に飛んで行くんですから、バッテリーが持たないですよ!


それに、未確認飛行物とか、領空侵犯とかで撃ち落とされちゃうんじゃ」


「信じろよ。サンタの魔法をさ。


それに、その辺は爺さんに頼んどいたから、何とかしてくれてるさ。


さ、俺達は重い荷物を運ぶぞ。


何とか今日中に配り終わるんだ」


「クロームさんはソリで飛べないじゃないですか!」


「ルドルフ、忘れたのか?俺だってサンタだぜ。


よし、行くぞ!ドローン達!子供達にプレゼントを届けるんだ!」




「あ、もしもし、わしじゃ。サンタクロースじゃ。


定刻通りに、わしとクローム、


それと今年は沢山のドヨーン、ああ、そうそうドローンが飛ぶ予定じゃ。


毎年世話を掛けて悪いが、よろしく頼むぞ、大統領。


やれやれ、サンタクロームも世話が焼けるわい。


さて、わしもそろそろ行くかの。


子供達が待っておる!」



「メリークリスマス!」



「あー。昨日は疲れた。


ソリってお尻痛くなるんだな。


さて、今日はゆっくり休もうっと」


「ん?チャイムの音がする。


はい。あ、宅急便。どうもー。ご苦労様でーす。


クリスマスの朝っぱらに届けものって。


俺なんか頼んだっけ。中身は・・・


ん?この手紙・・・」


「サンタクロームへ。よく頑張りました。サンタさんからのプレゼントじゃよ」


「なんだよ!じいさんだってGAKUTEN使ってるんじゃん!」

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