7月

2020年7月06日 「ふたりだけの七夕」


七夕の夜。雨の降る空じゃ織姫様と彦星様が会えないと人々は悲しんだ。だが、当の本人たち喜んでいた。毎年、衆人環視の中での逢瀬心が休まらない。今年ばかりは雨雲のカーテンでプライベートが守られたのだ。




2020年7月13日 「揺れる」


実績はないが誰より実力はあると自負している占い師が言った。「私の占いによると明日大きな地震が発生します。みなさん気をつけなさい!」しかし、次の日になっても地震は起きなかった。彼の自信が大きく揺らいだ。




2020年7月19日 「抜け殻」


あなたを失った私は空っぽだった。悲しむことも、憤ることもできず立ち尽くした。瞼の裏側、残照のようなあなたの背中にただしがみつくことしかできなかった。今の私はまるで蝉の抜け殻。忘れ去られて、朽ちていく。




2020年7月26日 「水掛け論」


広大な砂漠で遭難して二日、手持ちの水がとうとう底をついた。「こうなったのもお前のせいだ!」「いや、そっちが悪い!」男たちは答えのない口論を始めたが、それもすぐに収まった。彼らにはもう掛け合う水がない。

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