「見られたくない。目立ちたくない。でも、必要とされたい。」


だけどこの子が選んだのは嘘の幸せと隠されて何もなく見えるだけの世界。

多分彼女が望んで見た世界は側から見れば美しいけれど、本人達からしたらつまらない。

むしろ小さな小火が心の中で発火していくのだろう。

そしていつか壊れる時が来るのだ。

火事で全焼。

火を消さずにまだ触れていない地に逃げる。

そして新しい地の者も何もないを望み、心を無視して皮の部分では受け入れようとする。

受け入れた瞬間また小火が、受け入れた彼らの中にも、心から受け入れられたわけではないと察した者の中にも発火する。


僕の生きてしまっているつまらないと彼女の望んだつまらないは違うけれどなんだか少し僕と似ていると感じた。

もしかして本当にここで描かれる彼女は。。


「どうなさいましたか?」


停止する僕を笑顔で目の前の男は覗き込む。

僕の意識は僕の頭の中から黒い建物内に戻った。


「あ、なんだか僕ここに描かれた少女を知っているような気がして。」


ふうん。というように目の前の男は嬉しそうにそしてまた何故か苛立ったように笑った。


「まあ、それは知りませんが、次の作品を見ていただきたいのですが。」


「すみません。お願いいたします。」


「ふふっ。大丈夫です。次はこちらの作品になります。」


すっと先ほどと同じ様に男は目の前の絵を指す。

そこには


でもなぜだろう。先程と変わらない流れ、案内され僕が絵を見る。ただそれが同じようなテンポで繰り返されるだけのはずなのに。

目の前を歩く男の足取りが若干速くなった気がした。

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