証言者Cの供述

 部長お疲れさまでした。大変じゃありませんでしたか?

「まあ……はい。そうですね……ごめんなさい……私が頼りないせいで、演劇部が廃部になってしまいました……」

 そんな、謝らないでください。

「本当に、本当にごめんなさい……そもそも私には無理だったんです……先輩の後を継いで、演劇部をまとめるなんて無理だったんです……」


 泣かないでください。ええと、では話題を変えましょうか。Cさんから見て、演劇部はどんな感じでしたか?

「どんな感じ……? え……怖いイメージしかないです……」


 何故ですか?

「……部室が荒らされていたじゃないですか。あれで皆揉めちゃって……あの時すごく怖いなあ、って思ったんです。それで皆辞めてしまいましたし……」


 ……演劇部の闇ですね。

「私、皆をまとめるとか苦手で……あの時もおろおろするだけで、何も出来ませんでした。運営のほとんども楓ちゃんに任せていましたし。あ、でも……私、なんにもしてなかったわけじゃないです。確かに表立って仕切っていたのは楓ちゃんですけど、困ってそうな人の手伝いをしたりはしてました。あ、でもこれ部長の仕事じゃありませんね……」


 文化祭で部室が荒らされていた、という話はどのように考えていますか?

「……酷い話だと思っています。そのせいで、文化祭に出れなくなってしまいましたし。せっかく楓ちゃんが念願の主役になったのに。あの後は大変だったなあ……皆ピリピリしちゃって。特に未海ちゃんと唯ちゃんの言い争いが凄まじかったのは、今でも印象的ですね……唯ちゃんと未海ちゃんは、役を巡ってオーディションで戦った仲ですから。そりゃあ、仲が悪くなるのも当然なんですけど……」

 なるほど。

「だから、未海ちゃんが大道具を壊したのは唯ちゃんだ、って言い張ったのは、やはりオーディションが原因……ですね。こんなことも言ってたっけ……『私が役やるのが気に入らなくて、舞台に立たせないようにしたんでしょ』って」


 そんなことも言ったんですか?

「未海ちゃんは……うん、まあ……カッとなりやすいタイプだから……新歓の時も実里先輩に怒られて、すごくヒステリー起こしてました」


 新歓の劇はCさんから見て、どんな感じでしたか?

「本番、トラブルなく終われたのでよかったと思いますよ……? 苦戦していた殺陣も上手くいきましたし」


 文化祭の配役は、どうやって決まったんですか?

「凛音ちゃんは初めての舞台だから、絶対役者をやってもらおう、って彩ちゃんと決めてました……未海ちゃんと唯ちゃんは、どっちも上手かったので……正直どっちでもよかったんですよね。だからその辺決めるのが大変だったなあ……と」


 そう、ですか……演劇部、どうしてこうなってしまったんですかね。

「私のせいです……私が、私が不甲斐ないせいで……本当にごめんなさい、ごめんなさい……」

 すみません! 変なことを言ってしまいました! ええとでは最後に……演劇についてどう思っていますか?

「え……? うーん、やっぱり楽しいものだと思ってます。皆で作り上げるものだから、達成感もありますし……やっぱり、楽しいものをやりたいですよね」

 大変参考になりました。貴重なお話、ありがとうございました。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る