第9話 小さな少女と挨拶をしたい
4月2日、午前6時3分。
目を覚ますとそこは見慣れぬ天井。
俺を拉致した
何で俺はここにいるんだ?と、記憶を呼び覚ますのに数秒を要したが、全てを思い出した瞬間に「思い出したくなかった」と後悔した。
全ては夢、もしくは昨日のエイプリルフールの一日だけの盛大な嘘、ドッキリだったらどんなに良かったか。
だが、芸能人でもない平凡な一般人の俺にそんな大掛かりなドッキリを仕掛けるような奴はいない。
………はずなのだが、ドッキリ以上に大掛かりな『理想の国』とやらに俺を誘拐するような
部屋に備え付けの洗面所で顔を洗い、とりあえず1階の昨日夕食を食べた食堂へ降りて行った。
食堂に入り、昨日も見たあの長テーブルに既に着席していたのは三人。
一番奥の正面、いわゆる『お誕生日席』にいるのがここの
そして
今ここにはいないが、昨夜紹介されたもう一人のここの住人、
ここに来てから出会った中で一番小柄で、一番幼く見える。
背の高さのみで推察するなら中学生………いや、もしくは小学生の可能性もある。
長く綺麗な金髪を頭の両サイドで
その金髪の少女は食堂に入ってきた俺の存在を一瞬だけチラリと見たが、その後は気にも留めずに黙々と朝食を食べている。
「おはよう、
「ああ………」
そして
「お、おはようございます、
「いや、だから無理に後輩キャラを作らなくていいから。それに年上ってだけで、ここでの関係で言えば
どうやら各々の席順が決まっているわけでは無いようだな。
「毎日全員がここに揃って食事をするわけじゃないからね。いる人だけ
「お前はエスパーか」
俺の考えを先読みして解説を始めた
「さて、
「人の印象を
「こう見えても
「お前、
別に
もしかしたら
ちょっと
って言うか、言葉を交わす前に俺は『ロリコン疑惑』を
とりあえず怒りを鎮め、深呼吸して………
「俺は
できるだけ威圧感を与えないように意識しながら優しく挨拶をする。
すると、先ほどからずっと俺達の会話に全く興味を示さず黙々と食事を続けていた金髪少女の手が止まった。
そして、すぅっと顔を上げ、一直線に俺の目を見つめてくる。
その鋭い眼差しは見た目の幼さとは逆に、むしろ大人の気品のようなものを宿らせている。
美しいサラサラの金髪も相まって、まるでフランス人形のようだ。
何かと下品な
「………アンナ」
少女が静かに声を発する。
16歳という年齢を聞いた後ではあるが、幼い見た目と釣り合うような幼さを感じさせる声。
「アンナ?」
それがこの子の名前か。
日本人とも外国人ともとれる名前だ。
するとアンナはニコッと微笑み、言葉を続けた。
「
ほんの数秒前まで金髪少女の
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