第22話 次なる儲け、不穏な動き

不安だった話がつき、船主達は大喜びで連れ立って帰って行きました。

無理して考えた商いは、失敗する紀文とて今回リスクは有りましたが商売相手のたっての願いでしたし情報もあり、紀文なりの思案もあったので快く引き受けました。

(相場もしくは商いには、機が有りここぞというときに思い切り打って出よ)河村瑞賢の教えを紀文は忠実に実践致しました。

紀文は高垣亀十郎と根来衆を呼んだ。先ずは根来衆の三人がやって来ました。

「あのう若旦那、何か私共にご用で御座いますか?」

「そのほう達は、今から玉屋へ行き江戸花火を二十発ほど仕入れて来て欲しい、爆発すると危ないからそろりとなぁ気をつけてなぁ」

「へい、分かりました早速に手配します」

 と言って外に出て行く、代わって高垣亀十朗が顔出す。

「あのう文左衛門どの、私に何か御用向きでしようかな?」

「おお亀十朗か今のところ江戸で、何か変わったこと無かったか?」

「へい特に、あっ吉原で奈良屋茂左衛門という人、若旦那の事を根ほり葉ほりそれは詳しく聞いてましたよ?」

「奈良茂か怪しい奴だな詳しく調べて報告してくれ、どうも気にかかる引っ掛かる奴だな歴史を学んで新しきを知る、人の思い考え行動はいつの時代でも似たものやからなっ!」

「へい地元風磨一族皆さん方の協力をお願いして、わかり次第逐次報告します」

 奈良屋茂左衛門、後に文左のライバルとなる人物だが、すこぶる評判悪く芋場町材木商の柏木太左衛門を、幕府用立ての檜材売り惜しみと町奉行に訴え出て罪に落としいれ、没落させて江戸所払い島流しにして、柏木の木材をただ同然で手に入れて大儲けした。

実は車夫をしていた時に、柏木の材木も運び置き場所や品目ならびに数量を、把握して知ってました記録して手帳に書いている。

要するに柏木のお上に隠していた材木、の有りかを把握していました柏木はそれが知れれば死罪に成る可能性あったので、口を割りませんでしたそれを柏木が江戸所払いになった後に、我が物としたので御座います。

もう少し詳しく述べるなら、柏木太左衛門お上の逆鱗に触れ家は閉所(財産没収)江戸所払いで島流しの刑に成り、その後奈良屋茂左衛門が捨て値にてその事業や得意先などを引き継ぎました。この時にやくざや下っぱ役人との繋がりが出来たのでしょうか。

と云っても奈良屋は芋場町に店を構えていたわけで有りません、その後霊岸嶋に店を構えまして公儀御用達材木商を、地道に営んで店を大きくしていたようで御座います。

この人は若いときから車夫の仕事(大八車引いて荷物運び)などしてかなり苦労して材木商になった、紀文より十歳ほど年上でかなりケチでしたが、後年紀文と何かと張り合いそれで本人は己の金へ執着心から、救われたのかも知れませんねえ。

人は目前に金儲けが見えると何かと怖い事考え、それによっていろいろと悪い事が起きるのであるそしてはたに迷惑掛けます。

善なる者反対の邪悪な存在も、あると認めなければならないので御座います、汚いもの見たり知ったりして清く美しい価値を知る。

吉原は小金持ちや俄か成金の集まる所でその儲けた情報も集まる処で有りました、故にこの近辺を探っていますとその噂とかが耳に入ってきましたので、少し金を出せば苦労なく情報が掴めます蛇の道は蛇で、勘が鋭く真似のできない中々賢い人で御座いますね。

奈良屋茂左衛門この時柏木のような何か金儲けのネタはないかと吉原で情報を集めていました、そして最近紀州の田舎者が蜜柑て儲けた話しを耳にして、これはいけると紀文の事を嗅ぎ廻っていたので御座います。

「奈良茂か掴み処無い怪しげな奴やな、ほなもう一度芸者呼んでど派手にやろうぜ!」

「あのう若旦那、魚の件本当に大丈夫ですかねぇ私少し心配で御座いす?」

「心配ない今運は我に運有り、そんな時には押して押して押しまくるんや!」

「はあさよですか、よう判らんけどな?」

人は目前に金儲けが見えると何かと、怖い事が起きるのである。

善なる者反対の邪悪な存在あると、認めなければならないでないと、その邪悪なものに正義たる善は負け悪人をのさばらせるのだ。

 紀文らが江戸で遊んでる間、魚の積み込みがすでに終わっていた、深川で二日間交代で遊んで佃島に帰り皆は揃った。

「文左衛門の旦那皆満足しました、深川の芸者さん粋な姉さん多くて、話しも面白く酒も旨く進みました!」

「うんそうか、それは良かったのうハハハッ満足してくれたか!」

とても十七歳とは思えぬ大尽ぶりで御座いましたが、まあ命がけの仕事したので良いとしますか。

 文左はその間も根来同心より上方の情報は常に聞いていた、今も昔も情報は金なり信長も秀吉も情報の大事さを知り、活用して成功したが商いも同じです。今は戦も無いだから忍者も仕事が無く暇であった、そこで文左衛門は忍者を使って各地の商品の情報を、探らせていたのである。云わば総合商社ような存在でした、目のつけどころが違いました。

たとえば世界的富豪のロスチャイルド家は、情報によって大儲けをしました。少し脱線しますが初代マイヤー・アムシェルと五人の息子達の時代に千八十二年。フランクフルトで古銭商や両替商をしていた。息子達はそれぞれヨウ-ロツパに分散し、別れて住んでいました。

遠くにいても息子達には結束を、大事にするように言っていました。ロンドンに住む三男のネイサン・マイヤー・ロスチャイルドにワーテルローの戦いの結果をフランスのフランクフルトに住む、長男から英国軍よりも早く伝え聞いていた。

イギリスにいたロスチャイルド家に投資家は注目しました。すると初めイギリスの株式を売ってきました。投資家達は狼狽し相場は一斉に崩れ、市場は阿鼻叫喚になりました。

フランスが負けたのに勝ったように思った投資家により暴落した、イギリスの株や債権を裏で捨て値段で自信を持って買って大儲けをしました。情報は金儲けの種なのである。金を惜しんでいけません。情報の大事さは世界共通です。少し脱線が長くなりました。

 忍の真価は武術で無く如何に早く必要な情報を探るかです、まぁスパイが本業です。

 云うなれば秀吉は、信長の猿面間者であった。話は飛ぶが実に文左衛門も情報の大事さを知る、根来流の隠れ忍者であったのだ。




































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