泉翔也の視点6

「あ。」

 返信が来た。アイドルのアイコンの横に長々と名前を綴る返信主はこういった。


『【ここからはじめよう】から縦読みなのではないですか?』


 縦、読み……? ……あ。

『しいるめくれ』か。縦読みは、そうなっている。

 僕は、急いでシールを剥がしにかかる。早く。早く。早く。早くシールを剥がさなくては。全力で爪を躍動させ全身の集中力を注げ。

『このタイムマシンは実はタイムマシンではない』

 どういうことだ? はやく、はやく。さっさとシールを捲るんだ!

『人の幸福は他人の不幸の上に成り立っている』

 くそ、なんだ、なんだよこれ。どういうことだ? 意味が分からない! 意味が分からない!

『彼は私を利用した。私を生贄にした。』

 ああああ! 黙れ黙れ黙れ黙れ黙れ! うるさいうるさいうるさい! 早くシールを剥ぐんだ!

『私を置いていけば不幸はすべて私の身に降りかかるだろう。』

 次は! 次! はやく、早く! 早く! あああ、クソ、クソ、クソ!

『私の名前は、時乃アズサ。研究者だ。蘇我隆平に騙されるな』

 アズサ……?

 ……ああ、この前、僕が見ていたあの論文…。

『君の動きは監視されてるよ。気をつけてね』

 ……は、は? 監視……!

 僕は焦って周りを見渡した。どこにいる?僕をこんな世界に飛ばした奴は、どこにいる?けれど、見渡せど見渡せど、そこには散らかった家具があるだけだ。

 僕は恐る恐る振り向いて、シールに向き直る。リボンを着けたうさぎが、『見ちゃ駄目』という看板を持っているシール。

 それを、ゆっくりと剥がす。

 ぱり、ぱり、ぱりり。

 ゆるりと現れたその文字に、僕は驚愕した。


『君はもう@@@されてるよ』


 ……え、ええ。嘘、だろ。

 慌ててSNSを開く……が、そこにはあり得ない文字が灯っていた。『このアカウントは凍結されました』

 ……は? ……いや、は?

 トピックには『日本人、集団記憶喪失』と書かれている。

 #はもう&&も考えられなくなった。恐くて恐くて、「№№№!」と叫ぶしかできなかった。縺溘☆縺代※!縺溘☆縺代※!縺ェ縺ォ繧ゅ∩縺医↑縺�と叫んだ。泣きながら#はそのllから飛び出る。途中で転けて血が出た。¶√∆«⁇«πと言った。∆∆∆の@@@はjjjjと‡‡‡‡‡した。#の¥は音をたてて崩れ、❜はオレンジ色に溶けて落ちる。見えないし、聞こえないし。それでも#は%%%を死に物狂いで動かして、₱₱₱を掴もうとした。それでも、₱₱₱には引っ掻き傷が付いただけだ。#は泣きながら、小さく残ったその力を振り絞り、最期の----------をした。


  『#ここはどこですか』

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