泉翔也の視点4

 さっきの返信のコメントは拡散され、いつしか陰謀論や都市伝説として現れ、それがまた僕のSNSに訪れる人数を増やした。僕は、多くなりすぎて対応しきれない返信で溢れかえったスマホから目を話し、商店街を歩く。

 ふと気づいた。壁に沿って、赤く記号が大量に書いてある。『--・・- -・-・・ ・-・・ -・--- ・---・ 』。このパターンが、繰り返し商店街に書き込まれている。すぐに写真を撮ってそれをSNSにアップする。


『これは何か、どなたか分かりませんか』


 僕は返信がくるまでの間、また少し歩いた。今度はまた別の暗号。数字の羅列が角を曲がっている。いったいこの世界は何なんだ。暗号ばかりだ。

 僕はその写真も撮ってSNSに上げた。その時、先程の呟きに返信が来ているのに気づく。


『モールス信号ですよ、それ。意味は、』


 その先を見て一瞬、背すじが冷えた。


『【ひきかえせ】ですよ。』


 誰か、僕を見ているのか?…でも、これで一つ理解できたことがある。ここには人が来ている。確実に来ている。それだけで、幾分かの安心感。良かった……。けれど、『ひきかえせ』?なぜ、そんなことを言う?危険が迫っているのか?

 数字の暗号の方にも返信がついた。どうやら、道案内の暗号らしい。僕は、少し強く拳を握ると、モールス信号を無視して歩みだした。

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