短編集

ワルク

第1話 ある夏の日

即興小説トレーニングで書いた物です。


お題 明るい弔い

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八月二十九日、夏の終わりも近いあの日。

いつか訪れると思っていた。日に日に近づいてくる。

忘れて楽しんでいた間にも、目を背けていた間にも、終わりは近づいてくる。

だって―――


サチ、元気でな―――


そういって最後に撫でてくれた優しい手に、もう触れることも出来ない。

そうして、夏の終わりも近いあの日。


私は、大好きなおじいちゃんとお別れした。



「懐かしいな……」

まだ少し蒸し暑さの残る、夏の終わりに近い日。

もう、何年も見る事の無かった、あの日の思い出。

優しい声と、もう覚えているはずの無いぬくもり。


窓の外に見える青空に、大好きだったおじいちゃんの笑顔を思い出す。

どんなふうに笑っていたか思い出せないのに、それでもたしかに、いつも笑って見守っていてくれたんだ、と覚えている。


なら、私も笑っていよう。

もしかしたら、どこかでいつものように、見守ってくれているかもしれない。


そしたら、おじいちゃんに笑顔を返せるかもしれないから。


ありがとう、って。

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