「 」

「詩」がかけなくなってよかった

これからあたらしいところへゆける


「私」



「 」私


になって

それから


ぼく


まで、もどってきた


「詩」



「 」詩


になって、ようやくぼくの言葉がうごいた


ぼくの詩は、「詩」のなかにない

「詩」のそとに、ぼくの詩がある


それはいつでも、生活のなかにある

はたらくこと、たべること、ととのえること、くるしむこと、

まなぶこと、あそぶこと、さけぶこと、はしること、とぶこと、

よろこび、いかり、おどろき、ねたみ、はぎしり、じだんだ、

ぬかよろこび、おもいこみ、ばかわらい、わらいなき、

あさに、ひるに、よるに、ゆうがたに、かぜに、ひかりに、かげに、

せんたくものに、かんきせんに、おちゃわんに、えんぴつに、

そうしたものとともにある


それは日々のあしもとにある

見なければ見えない、けっして見えない、

そういう生活のもとにある

あたまのなかでつくらない、それはぼくの詩ではない

ぼくにしか見えないもの、ぼくにははっきり見えるもの、

それがぼくの詩


ぼくはひとつの詩に生きてるので、もう「詩」を書くひつようもない

くらしていく、いきていく、

そのなかでぼくの見るもの、見たもの、見えるもの、

ひとがそれを詩と呼ぶなら、それでいい、

ただぼくは

生きて、書く、

それだけのみちをいつまでもゆきたい


夢みたいにうつくしいものが

芥のようにころがっている




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