第14話 ウサギ如きに下に見られている男子が居るそうです

「なあキリカ。なんか俺達、あのウサギ共に見られてないか?」


 街から出て直ぐにフーライとキリカを囲むように、遠目から多数の角刃ウサギが見張っている。


「フーライ殿、非常に言い辛いのですが。あのウサギ達がねらっているのは、フーライ殿だけです」


「なんですと?」


「実はあの角刃ウサギという種類の魔物は、勝てる相手にしか近寄らず、襲いかからないのです。今は某が前を歩いているので、勝てないからと近寄ってきません。なので某から離れたら、先日の様な惨状になると思います」


「あめ、つまり。俺は生物として、あのウサ公以下の存在だって舐められてる事で間違いない?」


「……………………はい」


 その時キリカは、存在しないはずの堪忍袋の緒が切れた音を確かに聞いた。


「キリカはここに居てくれ。生きるって事は肉体の戦闘力だけじゃねーって事、その命を対価に理解させてくるからよ」


 フーライは深呼吸すると、キリカの返事も聞かずに走り出した。


「ド畜生め、このウサ公がー!1匹残らずぶっ殺してやんぜ!!」

「フーライ殿!?」


 キリカの静止もなんのその。

 怒りに任せたまま10か20の呼吸分を走ると。

 ウサギはフーライを包囲して、その刃状の角を昼食の肉に向けて飛びかかり突き切る。


 ボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボトボト。


 しかしウサギの角がフーライに触れた瞬間。

 逆に彼等が吹き飛ばされ。

 首に穴を空けられるか、首を切り落とされて絶命した。

 無傷で汚れの1つすら付着しなかったフーライと、血塗れの大地に無残な死体をさらすウサギの山。





 この日。

 ウサギの死体を収納したフーライは、キリカの指示の下で懸命に剣を振った。

 剣をの代わりにウサギの角刃を使ってだが、全身全霊で素振りに励んだ。

 摺り足で一歩進み剣を振り下ろす。

 一歩下がりつつ腕を上げ、下がり切る瞬間に剣を振り下ろす。


 腕が上がらなくなり足が震えるまで、丁寧に丁寧に。

 一歩一刀に全神経を集中して。

 惰性などなく。この一振り一振りの全てが、自分を変えると信じて振り続けていた。

 2度とウサ公如きに舐められない為に。




 フーライは腕が上がらないどころか、歩くのもやっとと言ったていになっていた。

 それでも強い男になるのだと、泣き言ひとつ漏らさずにキリカの後ろを着いていく。

 流石に今日のウサギ4体はロープで足を結び、キリカが背負っているが。

 それをギルドで売ると、先日と同じく6万……大銀貨6枚になった。


 貨幣の名前は国によって違うが、金属の含有量は多数の国で統一されている。

 誤魔化してバレたら自国の貨幣への信頼がなくなり、一気に経済破綻するからまず行われない。

 偽金の取締は厳しく、一族郎党死罪となっている国が殆ど。


 ちなみに貨幣の種類と数字はこの様になっている。


 銅貨10

 大銅貨100

 銀貨1000

 大銀貨1万

 金貨100万

 大金貨1億


 商人でもせいぜい金貨まで。

 大金貨からは貴族の資産や、国の取引等。

 持っている事に価値のある貨幣になっている。

 大金貨のみ並の金塊以上に大きなサイズで作られているので、使用に不便という理由もある。

 なお国ごとに金の呼び方が違うので、一般人からは単位までしか言われなくなった。

 今回のケースで言うなら、大銀貨6枚や6万と言われる,。



 宿に戻ったフーライは部屋に荷物を置く振りすらせずに夕食を食べ。

 部屋に戻ると自分とキリカに洗浄するだけして、ベッドに倒れ込み眠りについた。


「フーライ殿?やれやれ、仕方ありませんね」


 キリカはフーライの防具やブーツを脱がせると、少し早いが自分も寝ると決めて防具を脱ぎ始めた。


「おやすみなさい、フーライ殿」

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