第13話 ためるだけじゃなく出さないと……もちろんお金の事だよ?
「ではフーライ。ここにオーガをだすのだ」
工房に駆け込んだフーライとキリカ。
到着と同時にダンケルからオーガを出せと言われ、壁際の何もない床に収納から全てのオーガを出す。
「フーライ殿、待っ」
「なにっ!オーガが5体だとぉっー!!」
「遅かった……」
「しかも一撃で首が撥ねられて、ほぼ無傷の死体ばかりではないか!流石、黒髪の。いい腕をしておる」
ダンケルはまた走り去ると、しばらくしてから工房に戻ってきた。
「あのオーガはワシが買い取る。今はこれだけしかないが、2人分の防具を作り。保存用に少々残して後は売っておいてやる。これだけの収納能力なんだ、誰かに知られると不味いじゃろう。製作費用と販売手間賃は頂くが、それ以外の売上げはおヌシ等に渡すと約束しよう酒と鍛冶の神に誓おう」
ギィー、バタン!
追い出されドアの閉まる音で我に返った2人。
キリカは額に手を当ててため息をつき、それを見てフーライはいつもの事なのかと納得した。
「防具と売値については、ダンケル殿に任せておけば安心です。ああ見えて職人としてだけではなく、商人としても中々の腕前を持っているようですので」
「これからどうする?防具の完成予定も聞かされてないし。屋台の串焼きとか収納して、外に訓練しに行くか?」
「そう……ですね。宿を取って連泊にしておいてから、夕方前まで訓練。ギルドでウサギを売ってから宿に戻りましょう。明日からは防具が出来上がるまで。午前は魔物狩りや旅に必要な物の買い出しに。午後からは訓練でどうでしょう」
「じゃあ、少し買い物してから訓練だな」
キリカに先導され歩法をマネしながら歩き、最初に案内されたのはハンター用品専門店だった。
店頭に置いておいては窃盗にあうので、店員に相談しながら買う品数を増やしていくシステムだ。
「ああ、すまない。中級者用の基本セットを1つ。あとは……」
ハンター用品の何か必要不必要かわからないので、フーライはキリカに丸っと任せている。
口と悪知恵は回るが知識と常識が不足しているので、こういう状況では役に立たない。
むしろ下手に口出しすれば、足を引っ張りかねない。
手持ち無沙汰で周囲の人物を鑑定してみる。
その中でも一際目立つのはキリカだ。
刀剣武闘術。
心眼。
能力2つ持ちである。
2つ持ちが、能力者数万から数十万人に1人の稀有な人物だとか言っておいて。
サラッと自分もその範疇に入っている。
(それを自慢せずに謙虚なのは、キリカの真面目さなんだろうな。ハンター登録時に調べるから、知らないはずもないし)
自分の能力でも鑑定は内容まで教えてくれないので、キリカの能力も推測するしかないが。
(人の事言えねえけど、キリカの能力と組み合わせも強力そうなんだが?)
オーガの首を一刀の下に落としたのも。
おそらく心眼で頚椎の接続部を把握して、鍛えた技で狙ったのだろう。
流石、斬理華と名付けられただけあって。名に恥じぬ腕前を得る努力をしてきたのだろう。
フーライがキリカの事を考えるうちに、思考は別の方向へと向かって行った。
(それにしても、もう何日目だ?若い身体に溜め込むと良くないんだよなぁ。こんな美少女と常日頃から一緒に居るわけだし?そりゃ貯蓄速度も増えるってもんよ。何気ない仕草とかうなじとかさこつとかチラりとみえてもうたまりません。むしろたまってきてます)
フーライがせい少年として、切実な悩みについて悩んでいると。
買い物を終えたのか、キリカが戻ってきた。
「フーライ殿。これからはこちらを背負い行動して下さい。保存食や水袋、個人の着替えや使用した消耗品等は買い足さなければなりませんが。特殊な場合を除き、大半はこれ一式で事足ります」
「おー、助かる」
フーライが渡された袋を背負うと、ガチャガチャと音がした。
「あとで詰め直ししなければなりませんね」
「ウサギが襲ってくるんなら、このままでもいいけどな。あれは食肉にも金にもなる便利な魔物だ」
「あの数を相手にそう言っていられるのはフーライ殿くらいのものですよ」
そう言ってキリカは兜を装着すると、フーライを先導して街の外へと向かい歩きだした。
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