第3話 反射の有用性

 ハンター専用門から王都の外に出たフーライは、防壁に沿って門から離れた。

 何がっても全力で門まで逃げ込めるが、門からは見えない距離まで移動した。

 魔法の練習で失敗したら恥ずかしいからだ。


 自分の魔法は火、雷、時空?回復の4種類が練度が高く。

 他の種類は最低限使えるだけの様だ。

 フーライは全部最高まで使えたら格好いいとの理由で、まずは飲水が確保出来る水の魔法から練習し始める。


 キュゥゥゥ!!


 つもりだったが、頭に刃状の角が生えた大きなウサギの魔物に脇腹を刺されて中断させられた。

 しかしフーライの脇腹にも、服にすら傷はなく。

 代わりにウサギの首に穴が空いている。


「うわっ!魔物っ!?……でもなんか、死んでる?」


 キュゥゥゥ!!


「あれ、また?」


 鳴き声が聞こえたので振り返ってみると。

 そこにも首が切り落とされたウサギの魔物が死んでいた。


「なんか、ちょっと怖いな」


 理解の出来ない現象に、フーライは少し怯え始めていた。

 何かある前に門に帰ろうかなと考えているうちに、手遅れになってしまった。

 どこから現れたのか、周囲全てを刃の角のウサギに取り囲まれていたのだ。


「しまった、逃げ場がない!!」


 フーライが突破する覚悟も決断も待たずに。

 ウサギの集団は、フーライ目掛けて飛びかかった。

 そしてフーライの服や肌に触れた瞬間に、首に穴を空けるか切り落とされて死んでいった。

 両腕で顔を守り目を瞑っていたフーライには、何か起こったのかも分からぬまま。

 ドサドサと音が続いて静かになっと思ったら、周囲に居たウサギが全て死体へと変わっていたのだ。


「ハハハッ。なんだかよく分からないけど、多分これがさっき目覚めた反射の能力なんじゃないか?」

(鑑定で能力は見えて読み上げてくれるけど、どんな能力かは教えてくれないからな。自分で調べていくしかないか)

 しばらくの間。フーライは気が抜けて、その場に立ち尽くしていた。







 キリカ・ヨウコウは南北に伸びる東の島国ジパングから来た、武者修行の旅をしている侍である。

 剣によって斬る理を体現した美しい華になれ。


(名字の陽光はいいけれど、斬理華なんて字を女に与えるなんて)


 キリカは自分の名を嫌ってはいなかったが、漢字については常々否定したい思いを持ち続けていた。

 今日もハンターとして任務……ではなく、仕事の依頼を報告し終えたら。

 いつもの様に、またナンパされた。


 断るとしつこく迫ってくるので、触れずに捌いていなすが。

 時間もかかるし、去りぎわの捨て台詞も理不尽だと思っている。

 勝手に襲いかかってきておいて、それはどうなのだと。


(自国以外では、あまり多くないらしいこの黒髪。鏡なんて高級品は見た事がないので、自分の容姿は不鮮明な水面でしか見た事がない。身長は伸びたが全体的に華奢で、胸や腰は剣を振るう上で邪魔になるサイズを超えてきた。どうやらこれらが男からすれば、十分に女として見れるらしく。声をかけるだけで手に入ればよし。ダメでも力で押さえつけてモノにしようと考えるらしい)


 まったくこの国の男の野蛮さにはあきれ返ると。

 気晴らしに安全じゃない街の外で、精神を研ぎ澄ませて素振りをしようと。

 門から出て人目の少ない場所を目指していた。

 その目的の場所で、始めて彼を見た。




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