キャラ描写に笑い純愛ぶりに感動

 一国の要職にある家にお嫁に入ったはずなのに、まだ許嫁だからと言われて他の侍女と同じような仕事を命じられたヒロインの香流が、そんなこともあろうかと準備してきた掃除道具の中の“ある物”に笑ってしまいました。それが何かは読んでのお楽しみ。絵で見たいと思わされる光景が繰り広げられます。

 嫁に対する義母のよくある仕打ちを苦にもせず、乗り越えていく痛快さを感じさせてくれる場面ですが、物語自体はそんな一家庭の中での覇権争いに留まりません。《飢神》なる化け物を狩る武闘集団の里に生まれた香流は、美弥という国で《飢神》退治を担う家の当主・銀正に嫁ぎますが、その裏には美弥の事情を探るという任務もありました。

 だから、虐められても耐えて美弥に居続けますが、銀正のことを知っていくうちに、彼が抱えている過去への後悔を知り、本当のパートナーになりたいと思うようになります。

 美弥の国を揺るがす事件にも巻き込まれながら、香流が自分でつかみとっていく幸せへの道を楽しんでください。


(「運命を自ら最高にする結婚小説」4選/文=タニグチリウイチ)

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