第4話
「手荒に扱うな。話を聞かねばならない」
「解っている」
その場の男二人が短くやり取りをしたあと、歩くように引っ張られる。
抵抗しても今より強引にされるだけだろうと、想像できるので従うことにする。
それが意外だったのか、少し力が緩んだ。
後ろでは誰かが私の鞄に触ろうとしたらしく、止めに入った男が「丁寧に扱え」と指示を出していた。
金髪の青年は、そういえば何も言わなかったな。
部屋を出て廊下をいくらか進んで、思い至った。
御前、と言われていたということは、やはり、彼は身分ある人なのだ。高貴な感じはしたし、間違いないだろう。
そして、この、私の腕を引く男は、その護衛をする騎士というところか。
派手な色のマントを着ているから、騎士の中でも重要な職に就いているに違いない。
何より、廊下ですれ違う役人たちが道を譲り、後ろからは部下らしき付添人がやってくる。
回廊からは中庭が見えた。
花をつけているものを観察すれば、何となく覚えがあるような気がする。
文化は違うが、植物の進化は変わらないということだろうか。
電気があるようには思えないので、文明的には後進。
前を行く男の腰には長剣。飾りでついているようには思えない。銃はまだないのか、隠されているのか。
日本史ならまだ得意だったのに。
エドアルドなんてどこの国の人よ。
男の後頭部を睨み付けながら、心の中で文句を連ねる。
髪の毛や目の色、顔かたちで国を判断できる能力はない。
アジア系なら予測できるが、それは自分が日本人だからだろう。
ヨーロッパも北か南か分からないし、アメリカと言われても区別がつかない。
そもそもこの場所が地球とは限らない。
次元が違う、とかなると、お手上げ。
ゲームや小説の中に入り込んだと考えるほうが良いかもしれない。
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