第14話 目覚めし力

「クイファさん、エレンさん!」


「あ、りゅー待って!」


劉は2人を見た途端、ナノの制止を無視してすぐそちらに向かった。


「大丈夫ですか!」


「りゅーさん!?」


クイファは劉が来たことに驚いた。エレンも声は出ていないが、驚いているようだ。


「なんで……」


「なんで来たの!」


クイファが聞こうとしたら、エレンが声を被せてきた。


「なんでって……」


「あんたは人間でしょ!?なんで人間の味方をしないの!?」


「襲われてたし……」


「そんなの関係ない!人間は、人間は……っ!」


「落ち着きなさい、エレン」


劉を今にも殴りかかりそうなエレンをクイファが宥める。


「今は怒る時ではありません。助けに来てくれたのですから、まずはここを突破しないと。りゅーさんはそちらから援護してください!」


「分かりました!」


僕はクイファさんに言われ、正面にいる3人と対峙する。3人の内2人は同じような格好だが、真ん中に立っている目付きが鋭く、がっしりした体格の大男が僕に質問する。


「てめぇ、人間なのにあいつらの味方なのか?」


「あぁ、そうだ」


「なら、てめぇも敵だ。ガキだからって容赦しねぇぜ」


そう言って3人が僕の方へ向かってくる。


(魔物や魔獣は沢山倒したけど、人間相手は初めてだ。できるのか?いや、やるしかない!)


僕は覚悟を決めて魔法を放つ。


「ウィンドボール!」


「がぁっ!」


目に見えない風の塊が敵の1人を吹き飛ばす。だが、残りの2人は間合いまで入ってきてしまった。僕は2人同時に相手をしなくちゃいけない。


「くっ」


ギィンと1人と剣が交わる。


「2人相手はしたことないだろ。さっさとくたばれ」


後ろから気配がした。僕は横に転がった。


「ちっ」


敵2人が僕を挟むようにして向かってきた。


「ダークボール・ダブルホーミング!」


僕が撃った2つのダークボールは2つとも避けられるが、背後からまた追撃する。


「鬱陶しいっ!」


大男に1つ目のダークボールを斬られた。だが、まだ1つ残っている。しばらくは時間を稼げる。僕は残った1人に剣を向ける。


「はぁっ!」


僕は剣で相手を斬ろうとするが、避けられて当たらない。


「魔法は中々だが、剣術はまだまだ素人だな」


そう言われ、腹に拳をいれられる。


「がはっ」


僕はそのままがくりと膝を付く。後ろを見るともう1人もやって来ている。


「安心しろ。痛みを感じないまま殺してやるよ」


大男が僕に向けて剣を振り下ろす。その瞬間僕の中で何かが聞こえた。


●●●


『まだ死にたくないだろ?』


僕はその声に頷いた。


『なら、解放するんだ』


解放ってなんだ?どうするんだ?


『教えなくても、お前ならもう分かっているだろ?』


「・・・」


僕はそれに何も答えない。


『早くしないと全員死ぬぞ』


っ!それはだめだ。でも、を解放すると自分じゃなくなる感覚がする。しかも制御できる自信がない……


『大丈夫だ。今回は盗賊を全員殺すぐらいで止めといてやるよ。お前が制御できるまでは出てくる気なかったからな』


信じてもいいのか?


『それはお前が決めることだ』


分かった。僕はを解放しよう。みんなを守るために。


●●●


大男がガキの首を斬ろうとすると、ガキから黒い霧が出てきた。


「なんだ、これは?」


まだ動けるのかと思ったが、動く気配がない。


「まあいい」


そのまま剣をガキの首に落とす。


「なっ!?」


振り落とした剣はガキによって掴まれた。


『はぁ、やっと動けたぜ』


ガキが立ち上がった。でも、なんか気配がおかしい。さっきとは別人だ。


「まだ、動けるとは大したもんだな」


俺はそう呟く。


『あ?』


その呟きにこちらを睨みつけてくる。その瞬間感じたことのない重圧が寄ってきた。


(こいつはやべぇ。死ぬな。逃げねぇと)


そう思い、足を動かそうとするが、動かない。


「?」


見てみると、下半身がなかった。そう認識した瞬間、脳に痛みがきた。


「ぐあぁぁぁっ!!」


(こ、こいつ痛みも感じないほど速いのか!?)


そうして意識が途切れた。


『久々すぎて訛ってるなやっぱ』


そう呟きながら剣に付いた血を振り払うと、後ろから気配がした。劉の身体を借りたは振り向かずにそれを斬った。


『次はあいつらか』


はそう言ってクイファとエレンがいるほうに向かった。


●●●


クイファとエレンはぎりぎりを保っていた。50人近い盗賊達を相手に戦えるのはさすが女王2人といったところ。


「「はぁはぁ……」」


だが、そろそろ限界なのだろう。そんなとき盗賊の後ろから爆発が起こった。次々と盗賊達が殺られていき、全滅した。クイファとエレンが奥を見るとそこには劉が立っていた。


<hr>

作者からのあとがき

めっちゃ遅くなってすみません!更新はしばらく早めにしていく予定なので、これからもよろしくお願いします!!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る