暑い日の出来事

黒銘菓(クロメイカ/kuromeika)

第1話

「暑い―。」


我が家のエアコンは開店休業のし過ぎてもう閉店した。


子どもにとってはこの暑さは殺人的だろう。


「ごめんね。エアコン無くて。」


申し訳無さで目線を反らす。


「アイス~」「も切らして無いんだ。」


最近電気がそもそも流れていない。


水道が遂に昨日途切れた。


不味い、もうそろ不味い。






「暑い~~」


子どもの顔が紅くなっていく。


違和感を感じる。


額に手を触れると熱くは無い。


というか……




触れられない。




あれ?そう言えばこの子は誰だ?


我が家で転がるこの子は誰だ?


僕に家族は居ないし、そもそもこんな所にわざわざ預けるなんて正気の沙汰では無い。




















あぁ、そうか…………そういう事か。








































「僕?帰ろうか?もっと涼しいところが有るよ。」


「………ん。」


そう言って幽かな僕の手を差し出した。








そうだ……俺は死んだんだった。


少し前にここで死んで、電気は止まり、水も止まり、腐臭だけ。


たった一人で死んでいたんだった。
















「行こうか………僕?」


「…………ん。」


幽かな僕に連れられて子どもは部屋を出て、てくてく歩いていく。


人気の無い道路の端を歩き、車の多い大通りに出る。










「さぁ、この先だ。」


「この先……涼しいの?」


「あぁ、勿論。とても、涼しいよ。」


















幽かな手で子どもを引いて僕は彼を連れて行く。












































 「どうしたんだい?僕。」


 「お兄さんが涼しいとこに連れてってくれるって………」


 「お兄さん?そんな人は居ないけど……君………迷子?」


 「?」
























これで良い。


クソみたいな暑さでやられて死んだ奴を一人連れてって何になる?




お断りだ。




暑さで死んだ俺の出来る事は熱さに唾吐くだけだ。


水道止められた家から異臭がすれば誰か気付くだろう。












じゃぁな。僕。


暑さに気を付けて、長生きしろよ。

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暑い日の出来事 黒銘菓(クロメイカ/kuromeika) @kuromeika

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