マスクにモヤモヤ。

コロナウイルスが世界中に蔓延してから、マスクをせずに素顔のままで歩いている人を見ることは、街中ではほぼ皆無になった。


いつも尊敬しているあの先生も、

顔も見たくない大嫌いなあいつも、

通りがかった近所のやさしいおばちゃんも、

ついつい目で追ってしまう素敵なあの子も、


皆、マスクで外界と顔を閉ざしてしまった。


もちろん私も例外ではなく、外出時は必ずマスクを着用するようになった。


少し前にAmazonで透明なマウスガード(口の部分がプラスチックの板で覆われていて、飛沫を防止してくれる)を買って、数回だけそれを付けて外出したことがあるが、なんだかんだで普通のマスクの着用に落ち着いている。周囲がみなマスクなのに、自分だけ透明なマウスガードで口元をスケスケにしていると思うと、なんだか落ち着かないったらないのだ。


別に普通のマスクを付けないと外出できませんよと、日本国憲法で決められたわけでもないのに、結局周囲に合わせて普通のマスクを使い続けている。こうして盛大に無駄になったマウスガード代(10個入り2000円)。すまん。


しかし、それでもマウスガードをしている時の開放感はたまらなかった。あの呼吸のしやすさはとても素晴らしい。仕事中マスクを着けたまま走って、その後の呼吸のしずらさはえげつない。もはや自殺に近いものがある。その点、マウスガードは


マスクをマウスガードにして、発見したこともある。

昔よりも、鼻が匂いに敏感になっていた。


田舎道を歩くと、前には気にも留めていなかった土の匂いや草の香りが強く鼻に抜けていく。電車に乗っていると、隣のサラリーマンの体臭や汗のにおいがものすごく気になるようになった。

おそらくだが、コロナ前の何倍も感じやすくなっていた。


部屋に籠ってばかりで自然を感じることの少なかったこの半年間、そのブランクを一気に埋めるように、私の鼻はこの世界の匂いをどんどん体内にとりこんでいく。思わず、いつもよりも長く歩きたくなるし、公園にでも行ってのんびり自然を感じたくなる。


げに素晴らしき、マウスガード。


ただ、問題はマウスガードはたいして感染防止にはならない。


唯一にして、致命的な欠陥である。




-モヤモヤはつづく―

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る