灰が降る

 …外の世界。何年ぶりだろう。私のお母さんが私を捨てた外。でも、前と明らかに変わったことは、景色。私が屋敷に入る前は、草木が生い茂り、青空が広がる、自然豊かな世界だったはず。…けど、今のここはまるで暗闇の世界。灰色の世界。建物は崩壊している。もう、私がいた世界は、まるで元から無かったかの様に…

「…こんな外の世界に、本当に咲桜さんがいると言うの…?」

 私の目的は、咲桜さんを迎えに行くことだけ。ただ…咲桜さんがどこに居るのか、手掛かりがないと捜せない…なぜ咲桜さんは、こんな世界で旅をしようと思ったのだろう…それに、旅と言ってもここまで時間がかかる物なのだろうか?

「咲桜さん…どこに行ったの…?」

 なんだか自分の中で嫌な予感がして、そんな独り言で誤魔化した。だって、咲桜さんが出ていったのは平和だった世界。けど、今の世界は違う…そうか、なら最初から咲桜さんがこんな世界に出たかった訳じゃなかったんだ…それにしても、何故こんな世界になったのだろう…何故灰色の世界になってしまったのだろう…

「なんか苦しい…」

 そう思って流歌さんが渡してくれたマスクをつける。きっとチリが舞っているのだろう。それで外にはたまに出ていた流歌さんは外のことを知っていて私に…なら、なんでチリが降っているの?チリって…灰とかゴミとかそういうのだよね…灰もゴミも環境が整ってない時に出る物だ…何か、私が知らない間に何かあったに違いない。

「…ん?君…何してるの?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る