第21話 Girl’s talk2

夏休みも残りわずか。


美戸姉みとねえ、もう勘弁して〜。」

「ちゃんと宿題もやれって言ってたでしょうが! あと2日で全部終わらせるわよ!」

「ヒイ〜。」


昨日の夜。


「佐藤、宿題写させて。」


クラスメートの鈴木 リンから幸太のスマホにメールが届いた。リンに自分のメールアドレスを教えたことはない。幸太は不思議に思ったが、おそらくペップを購入した鈴木サイクルの顧客リストを見たのであろう。どうしたものか? 幸太はちょっと悩んだが、すぐに考えるのが面倒くさくなってリンからのメールを美戸に転送した。


夏休みはアルバイトに明け暮れ、念願のPhil Wood の前後ハブ、ヘッドパーツ、ボトムブラケットを購入したリンは宿題は幸太のを写して済ませ、残りの夏休みで、それらのパーツをスチームローラーに組み付けて乗り回すつもりでいたのだが、そのメールを見て激怒した美戸にリンはこってり油を絞られ、宿題をやらされているのであった。


「美戸姉は夏休み何かあった?」

「別にないけど、そう言えば佐藤くんのお母さんに会ったよ。」

「えっ! アンタら、もうそこまでススんでいるの?」

「違うわよ! 佐藤くんがおじいさんの喫茶店でアルバイトしていてね。たまにコーヒー飲みに行ってたんだけど、そしたら佐藤くんのお母さんが店に来たの。久しぶりにコーヒーが飲みたくなったとか言ってたけど、あれは多分、私を見に来たんだな、きっと。」

「へー、佐藤のかーちゃんって、どんな人?」


「、、、美人。」美戸はうめくように呟いた。


「とてつもない美人だよ。私はあんな美人初めて見たよ。あの人がお母さんならマザコンでもしょうがないよ。私は銀河鉄道9◯9のメー◯ルが実在の人物とは思わなかったよ〜。」

「どれほどなんだよ!」


リンは突っ込んだが、半信半疑のようだった。


幸太の母のさちも顔色が悪く、がりがりに痩せているのだが、顔色はメイクで誤魔化せるし、身体も下着や着ている服でそうとは分からないようにできる。その辺り、祥は年季が入っているのであった。


「ところで、おばさんは元気なの?」

「知らないけど、大阪で男とよろしくやってんじゃないの。」

「そろそろ、許してあげなよ。私は詳しく知らないけど、何か事情があったんだよ。」


美戸は、ギロッとリンを睨んだ。


「ひいっ。」リンは一瞬怯んだが、珍しく言い返した。


「パパがスポーツサイクルの店潰して借金抱えて、ママが離婚届置いて逃げちゃった時にさ、おばさんは私を美戸姉と一緒にご飯食べさせて面倒見てくれた。おばさんは悪い人じゃないよ。何か理由があったんだよ。」


「そー言うリンちゃんのママは、どーなのよ。」

「さあ?、今どこで何しているのやら。もう諦めてるよ。でも、あっちのじーちゃん、ばーちゃんは知ってるんじゃないかな。どーも、そんな気がする。」


「お互い、親で苦労するわね。」

「そーね、佐藤んちのかーちゃんが一番まともなのかもね。」


二人は顔を見合わせて、笑うのだった。

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