第九話『リッチーのダイイングメッセージ』

リッチーについて

〇リッチー


生物が魔力を高める方法の一つに、全身に直接、魔力を流しこむというものがある。魔力が体になじむことで、それまでよりも多くの魔力が使えるようになるのだ。これを毎日続けると、一年後には膨大な魔力が手に入る。その上昇率はレベルアップの比ではない。


とはいえ、魔力の操作は高等技術であるので、この技を使える者は限られているし、何より代償が大きい。魔力が肉体に悪影響を及ぼし、骨や皮膚が変形してしまうのだ。術者は魔力を手に入れる代わりに、想像を絶する痛みを味わうことになる。この苦しみに耐え抜き、桁違いの魔力を得た人間――彼らはリッチーと呼ばれる。


過剰な能力向上の副作用として、皮膚は極度に薄くなり、角張った骨に張りついている。よく勘違いされるが、リッチーは不死者ではないし、不老でもない。人間と同じように年を取り、いつかは死ぬ。外見があまりに異質なため、変化を見取れないだけだ。不死者だと誤解されているのは、彼らの多くが【蘇生】スキルを持っているからだ。リッチーの素体はあくまで人間なのだということを、改めて強調しておきたい。


――ヒルベルト・シュターマン『魔物大全』より

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