第4話

クラスへの挨拶が終わると、4人はグラウンドに呼び出された。

「今から君たちの現在の運動能力を測ります。これ以降当分身体を動かすことはできないので、真剣かつ楽しんで取り組んでください。」

被験者は50m走、1500m走、上体起こし、立ち幅跳びに取り組んだ。当然のことながら、どれも施設の肥満児を大きく上回る記録となった。

「お疲れ様でした。この記録がこれからどれだけ落ちていくのか、僕たちもとても楽しみにしています。それではいよいよ本格的に実験に入りましょう。これから宿舎に移動しますが、みなさんにはこれを使ってもらいます。」

4人に用意されたのは電動車椅子だった。

「私たちの許可が出た場合以外、この車椅子以外での移動は禁止です。身体を固定するベルトは私たちにしか外せないようになっていますし、行き先もあなたたち個人では決められないようになっています。もしそれらの設定を無理に破ろうとした場合は『お仕置き』が待っていますので覚悟してください。」

そう言うと職員は4人が座った車椅子に丈夫そうなベルトを数本巻いた。両手足と胴体が固定されると同時に、車椅子は宿舎の方向へひとりでに動き出した。

各々の部屋に向かう途中、それらは食堂に入っていった。

「みなさんは部屋でも食事をしてもらいますが、その前にここでも食事があります。もちろん太るために開発された特別メニューで、お友達のものとは違いますが、今後どれだけ太っても、同じものをここで食べてもらいます。」

説明が終わると、車椅子の手首のロックが外れた。目の前には大量の揚げ物と白米が用意されていた。4人は言われるがままにそれを平らげた。その日はこの時間まで食事が与えられていなかったので、食欲は有り余るほどだった。

完食すると4人は再び手を固定され、それぞれの部屋に移動した。部屋は、ユニットバスと小さな寝室に別れていて、寝室にはベッド、机、椅子、戸棚、全身が映る大きな鏡、冷蔵庫などがさまざまなものが所狭しと置かれていた。ベッドは体重計の役割も果たしており、数値は天井と壁に大きく表示されるようになっていた。机にはすでに大量のジャンクフードと菓子が用意され、また戸棚にも多くの菓子が備えられていた。

「あなたたちの食事は、部屋での朝昼晩と夜食、食堂での三食、午前と午後の間食の9回です。与えられたものはきちんと完食してください。完食した後にまだ食べられると思ったり、食事の合間にお腹が空けば戸棚のお菓子を食べても良いです。飲み物は冷蔵庫に入っている特製ジュースだけです。」

部屋に共通して備え付けられているスピーカーからのアナウンスが終わると、すべてのロックが外れ、4人はようやく車椅子から解放され、それぞれの部屋で最初の食事を始めた。

次の日から本格的に実験生活が始まった。朝は大きく表示された今日の自分の体重と向かい合って目を覚まし、着替えが終わるとともに部屋での朝食、車椅子に座ればすぐさま食堂に移動し二度目の朝食をとる。10時ごろには授業中にもかかわらず校舎の中の多目的室へ移動、午前の間食を食べたかと思えば食堂で同級生とともに昼食を食べた。昼休みにあたる時間は宿舎で二度目の昼食、午後の授業に向かう頃には大抵2本目のジュースが空になっている。

教室に現れクラスの注目を集めたかと思えばその場で午後の間食、放課後は束の間の自由時間となり、限られた範囲内あれば歩くことも許されるが食堂で夕食の準備ができればそれも終わる。同級生はその日最後の食事であるところを、部屋に帰った後また一食分食べ、さらに入浴を終えると夜食が待っていた。4本目のジュースを飲み干した頃、ようやく就寝が許され、莫大なカロリーを身体に蓄えたまま眠りにつくのであった。


二週間も経てば、たちまち全員に目に見える変化が現れてきた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

child obesity research〜小児肥満研究所日記〜 @higo_mitsuru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ