第八章 このうみにきっと

44. 朝が来て

 長かった夜が明けて朝がきた。


 どんな朝でも五時に起床! もうくせになってるね。


「おはよ!」


「……おあよ」


 いつもどおり寝ぼけたのどかとあいさつして、境内の落ち葉をはいて、手水舎ちょうずやの器具を整えて、氏子うじこさんたちとあいさつを交わす。


 昨日何があっても、夜寝つけなくても、それでも毎日のお勤めは欠かせない。

 目の前にやるべきことがある。

 わたしにできることがある。

 それでみんながハッピーになる。

 だったら止まってなんていられない。


 授与所を開いているとき、ニオのおばあさんがやって来た。


「おはようございます!」


「はい、おはようございます。今日も元気ね、しずかちゃん」


「もちろんです! ……ニオ、どうしてます?」


「今朝はだいぶ落ち着いてたわ」


「そうですか。よかったー」


 ほっと胸をなでおろす。


「会いに行ってもだいじょうぶですか?」


 おばあさんは少し困ったように笑った。


「もうちょっとだけ、時間をちょうだい。ごめんなさいね」


「いえいえ!」


 あわてて手を振る。


「こっちこそごめんなさい。わたし、何もできくて。五年前だって、昨日だって、わたしだけ無事で、ニオばっかり傷ついて」


「そんなこと言わないでちょうだい」


 おばあさんはそう言ってわたしの手をにぎった。


「しずかちゃんも宮司ぐうじさまもあやまってばっかり。こんなにニオのためにがんばってくれてるのに。いつもニオのためにありがとうね」


 おばあさんが頭を下げる。


「そんな、だって、友だちですから!」


 と、わたしも急いでお辞儀を返す。


 おばあさんは目もとを手でおさえて笑った。


「ニオはいいお友だちをもって幸せね。しずかちゃん、これからもよろしくね」

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