03 試合準備(+ある男1)


 ポールが黙って作業に戻ったのでコリーはすこしほっとした。

 この話をこれ以上続けたくはなかったのだ。

『作業が終わりました』

 無線からフリッツの声が聞こえた。

「了解。こちらももうすぐだ」

 ガチャガチャと道具をしまいながら応答する。

『ボス……じつは気になることがあるんです』

「なんだ?」

『あの子供たちのこと……なぜか、知っているような気がするんです』

「親戚かなにかか?」

『いえ。違います』

「四人ともか?」

「おそらく、四人とも」

「じゃあなんだ、あの子供たちは有名人なのか?」

 コリーは冗談のつもりで言った。

「……有名人」

 だがフリッツはスピーカーのむこうで小さく呟いて、すこし間をあけてから「ひょっとしたらそうかもしれませんね。ボスはどうです? 思い当たることってありませんか?」と言ってきた。

「うーん」

 コリーは考えた。

 そう言われてみれば、さっき彼らと会ったとき、たしかに既視感を覚えた気がする。とくに、あのにそれを強く感じた。

 ――おれも彼らのことを知っているのだろうか?

 ほんとうに有名人ってか?

 いやまさか。

 有名人って、何のだよ。

 コリーは首を振った。

「知らないね。やはり知らない。見たことも聞いたこともない」

『そうですか……』

「こっちもこれで完了です」

 ポールが立ち上がって言った。

「よし……これで心置きなく戦えるわけだ」


 コリーは部下たちに言った。「これより、〈黒のケース〉を奪還する」


     ***


【真相その4 テロリストのうちフリッツだけが、事件発生まえから、子供たち全員のことを知っている】


     ***


〈勝利条件〉


 泥棒サイド(ラスティ・エミル・ダイスケ・ヘディ)

 ――SWAT突入までの間、〈黒のケース〉を守る。


 探偵サイド(コリー・ポール・バリー・フリッツ)

 ――〈黒のケース〉を奪う。


     ***

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