第二話 心配事
夜。いつもの飲み屋で集まって飲む。この日のテーマはもちろん遺跡発掘の件。
「どうする? みんな行くか?」
悟が言う。
「そういうあんたはどうするの?」
「俺は…行ってみたい。この目で確かめたい」
「でも夏休みを潰すのもなぁ」
配られたプリントを見返す。この日程表を見るに、遺跡発掘に参加すれば夏休みの九割はそれに費やすこととなる。
「恵理乃。君はどうする? 俺は行くけど」
休みぐらい思いっきり遊びたいというのが本心だ。だが単位も欲しい。
「なら私も行こかな。どっせ実家に帰ったってやることないし。去年なんて弟が大学受験だからって、一年間帰ってくるなって言われたから今年も帰らなくていいか」
弟は自分と違って頭が良い。でも邪魔になるからと、両親は帰省を禁止した。
「お前らはどうなんだ?」
悟が聞く。
「俺は、そうさねえ…。夏休みは暇だから行ってもいいかな? いい暇つぶしとダイエットになるっしょ」
大河は同意した。
「祥子は?」
「今のうちに経験積んどくのもありね。私も行くわ」
結局四人は行くことにし、教授にそのことを連絡した。
「じゃあまずは、テスト終了を祝って乾杯といこうか!」
ビールジョッキをカチンと合わせて乾杯した。
家に帰って来たのは一時過ぎだった。スマートフォンにメールが一通来ている。送り主は弟である。
「姉は実家にいつ帰る?」
親に説明するのも面倒なので弟にしてもらおう。
「帰らない。アルバイトがある」
そう返信した。そして寝た。
「この大荷物、どにかならんかねー」
出発当日、集合場所に恵理乃は遅刻した。
「遅いぞ恵理乃。時間厳守は基本だろうが!」
烈成が怒る。
「来ないよりはるかにマシよ」
真央がなだめる。
「よし全員集合完了だな。では出発だ」
一行は歩き出した。
「具体的には遺跡はどこにあるんです?」
恵理乃が烈成に聞いた。
「詳しくは俺も知らない。教授が誰にも先を越されないようにと言ってくれないんだ」
「それじゃ先輩も、目的地知らんので?」
「俺たちはただついて来いとしか」
ちょっと先行きが不安になる。無事に帰って来られるだろうか…。
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