Ⅻ. それはいわゆる様式美

 皆様お元気ですか。

 空元気でもいいから、元気出していきましょう。

 空回りでも、錆びついて回らないよりずっといいんですよ、見てて暑苦しいですが。

 お高く留まったやつの涼しい顔ってむかつくので、暑苦しくぬくめてやりたい。

 脂でぎっとぎとになればいいんですわ。


 と謎の呪詛をしておいて、創作について思うことを今日もグダグダと書いていきます。


 投稿サイトの小説を読んでいると、


 あのー、私これ読んだことあるんですけど……??

 読んだことはないはずなのに、読んだことあるんですけど……??


 という思いを抱くことってありませんか?

 盗作ではないのに酷似したストーリー、登場人物。

 よくある結末。

 それはもう、お約束とご都合主義がてんこ盛り量産型の様式美。


 例を挙げますと、冴えない少年~おっさんが、雨の日に傘も差さずに濡れている美幼女~美少女を拾って連れ帰る話。

 これ、舞台設定がスチームパンクになっているのだけで4作くらい読んだことがあります。ハイファンタジーやエブリデイマジック、現代もの、ミステリー、伝奇など探せばもっとあるでしょう。

 拾ったのが美少女アンドロイドだったり、男の娘だったりするようなバリエーションも入れればすごい数になりそうです。


 他にも、雪の中、行倒れになっている獣人を拾う話。

 あれー? どっかで見ましたね?

 これも私は今月だけで3作くらい読みました。これも、バリエも含めると膨大な作品数を誇りそうです。

 獣人は多くの場合人狼か人狐で、美少年か美少女、美幼女だったりするのももう想定内。

 あれー? なんかちょっと胸が苦しくなってきましたよ?


 あと、自分は不出来、不細工、貧相などと信じ切って諦めている主人公またはヒロイン/ヒーローを、ステキな存在が見出してくれて言われる通りに自分磨きするとあら不思議、絶世の美男/美女がそこに! という話。

 これはもう映画『マイ・フェア・レディ』を筆頭に様々な作品で何べんも何べんも焼き直されています。最近は美容整形やメイクを前面に押し出すものも多いですね。


 このほかにもいろいろとあります。最近はやりの婚約解消ネタとか悪役令嬢とか。


 ともあれ、こういうよく見る話というのは(半ば)様式化されているので、読んでいて落ち着きます。

 実家でお茶を飲むような感覚で話を追っていけます。

 だから、口が悪い私が

「けっ! 似たような話ばっかじゃねーの!」

と言おうとしても、お茶をもらって一口飲んでへにゃっとなってしまいます。


 いつもと同じお茶の時間であっても、お茶にもいろんな種類があり、お茶菓子が上用饅頭だったり大人買いしてきた駄菓子だったりしますし、茶の間で流れているのがワイドショーだったり火サス再放送だったり録り溜めた深夜ドラマだったりして味わいは随分変わります。


 あまり、様式の中で踊るのは私自身は好きではありませんが、安定した話運びができるので、ダメ扱いはしなくてもいいかなあ……。

 その代わり、やはり扱いとしては十把一絡げの作品群、みたいな見方をしてしまいます。

 しかし、荒縄で絡げた作品群の中でも際立って光る作品はあるものです。ですから、こういうお約束的なストーリー運びの物語でも、他の作品との差をつけるためにいろいろな努力をすればきっと報われるはず。


 ところで、今、私の背中にブーメランが刺さっています。

 痛いです。

 

 

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