突然、胸元にダイナマイトが埋め込まれていて、それが地球の命運を決める、という突飛な設定なのだけれど、物語は日常を描いていく。
そして、その不条理を受け入れてそのまま進んでいく主人公「環」のキャラクターがとても良い。こちらまで元気が出てくるし、周りの登場人物も、彼女に元気をもらっている感じがする。
1話1話に魅力的なフレーズが、それもごく自然に入っていて、次はどんなフレーズが出てくるんだろうというのも、次を読みたくなる要素のひとつ。全体的にポップな語り口も良いし、画がすぐに頭に浮かんでくる文体も楽しい。
環にとってのイラストに、全カクヨム作家というか「モノづくりをする」人たちの立場や葛藤が代弁されている感じがして、そういう点でも励まされたし、元気をもらった。
よく考えたら、ダイナマイトがなくても成立するんじゃないか?という話だけれども、そのくだりがあることによって、環により感情移入できるし、ものすごい突飛な設定にも「この世界ならありえるんじゃないか」という説得力を持たせている。
そして、なにより恋をしたくなる、というか恋バナをしたくなった。
疾走感溢れる爽やかな快作です。
最初から最後まで、ノンストップで楽しめました。
独特なセリフ回しに唐突な展開、それでも不思議と違和感はなく、何故かすんなり頭に入って来ます。
率直な言葉だけでなく剥き出しで取りとめのない言葉、そしてところどころ不意打ちのように笑わしてくるなど、地の文もセリフも筆者様にしか書けない魅力がたっぷりで、最後まで目が滑ることなく読めました。
何より、色んな感情に翻弄されながらも懸命に頑張る主人公の魅力に目が離せなかったです。
久々に理想の主人公像を見たような気すらしています。
レコード店でバイトする女の子が主人公なのでレコード自体の話もそこそこに出てくるのですが、それがただの蘊蓄に終わらず進行上で良い働きをしているのもいい味を出しています。
上から目線な物言いになってしまいますが、長過ぎない作品だけあって、無駄がなく綺麗にまとまっていて、しかしながら読後の満足感も確かなものでした。
この作品にしかない不思議な魅力、是非味わって頂ければと思います。
芦屋のB'zの稲葉の家の隣には、天童よしみのお屋敷があるという。
昔、名探偵コナンというアニメのオープニングにB'zの「愛のバクダン」という曲が使われましたが、とても節操がなく、暴力的な歌で当時アタイは「嫌だわーん」と思い、短パンから稲葉の稲荷寿司がはみ出していないかを確認する仕事を引退する決意をしました。
それから時は流れ、現代、愛と爆弾を題材にした小説が現れました。しかし、なんとこっちはといえば、下町の商店街が舞台の人情味溢れるお話と来ました。
そして、お好み焼きの描写がとっても上手。平手友梨奈ちゃん。
そこに、げえるちゃんの毒づいたやりとりが合間って、ほのぼのとした雰囲気がとても癒されるのです。
B'zさんは、この小説の第一話から最後までを歌えばいい。アゴが外れてもいいじゃないか。顎関節症になったって、人生は一度きり、いい思い出です。
ただ、残念だったのが、主人公の「環ちゃん」をなんて読むのかが、今月はフランス人のアタイには最後までわからなかった。なんて読むのでしょう?
誰しも胸に一物を抱えていると思う。誰だって爆発したらヤバいやつを抱えている筈だ。どうも導火線が短い人ほど、人生とても・すごく損をしているみたいである。あるいは、すごく得をしている。羨ましい。でも僕としてはそういう風に得をしている人にはあんまり近寄りたくないなぁと思う。なんか怖そうだから。
主人公の絵描きの環ちゃんの胸の間には、ガチで物理的にダイナマイトが挟まっている。ささやかな谷間とも言えない間に、比喩でも何でもなく。その証拠に、あんまり環ちゃんが高まると襟首から煙まで出ちゃうんである。想像しただけで面白い。メチャかわいくないですか? そのダイナマイトが爆発すると、環ちゃんの命じゃなくて、地球がヤバいんだぜ!って事をひょんな事から知って物語がスタートする。
アルバイトをしているレコード店の店長はもちろん、お客さんとの交流があり、ご近所の商店のお好み焼き屋さんとの出会いがあり、環ちゃんは胸のダイナマイトを冷やしたり、発熱させたりしながらちょっとずつ成長していく。自分が描く絵が「何か違う」と思いながら、誰かの役に立ちたいと思いながら、「私なんか」と思ってしまいながら日々奮闘していく。やがて、ダイナマイトを爆発させない為に、宇宙人から告げられた環ちゃんに「して欲しい」ことは、一見あまりにも些細で、でも環ちゃんにとっては残酷過ぎるお願い事だった。果たして環ちゃんは地球を救えるのか? 恋を成就させる事が出来るのか? 素敵な絵を仕上げる事ができるのか?
是非その続きを見届けていただきたい!
以下ネタバレ有(上でもしてたらすいません)
絵文字さえ取り入れているのに、文章の流れとして隅々まで気を使っていらっしゃるみたいだ。じっくり読むのも有り、なんなら飛ばし読みも上等!という雰囲気である。実際「よし、これから小説を読むぞ!」と気負わず読み進めていける文体で、とても難しい事だと思うんだけど、そんなの当たり前〜みたいに書いていらっしゃるのですごいと思う。
それから悪意もあからさまなエロも、もちろん暴力も一切見当たらない。ひたすら徹底して善意と可愛らしさで読み進めてしまう。唯一主人公がブチ切れるのが異物としてのダイナマイトに対してだけである。そこにはブチ切れるに値する理由があるし、だからこそ、そのシーンはとても印象的で胸熱だった。ブチ切れて当然ですよ。めちゃ応援したわ。でも、それですら。
この作品は愛でしかない。
是非御一読を!
好きな人と結ばれちゃったら、胸に埋め込まれたダイナマイトが爆発して、地球が破滅する!
そんな重大問題を抱える主人公。バイト先の店長が好きな女の子。
ま。ちょっと読んでみて下さい。
この作者の書かれる一人称語りは、そりゃあもう職人芸ですから。
他の作品もそうですが、ほんっとテンポがいい! 語り方が既に未来的。
「げえる節」です。特許取って下さい(笑)真似できないなあ。
ダイナマイトとか宇宙人とか、問題は山積みなのに、とってもハートフル!
店長とのやりとり。ボケツッコミ。楽しいです!
一気に引き込まれるホットな作品! おっと、あまりホットだとダイナマイトから煙が出ますね(笑)
おすすめですっ!
歯切れ良く、ぽんぽんぽんぽーん! と生まれてくる言葉を読んでいると、楽しくなってくる。
いいねいいね〜! とすいすい読んでしまう。
しかしふとぐわーっと掴まれる。
言葉だったり、その行動や決心だったり。
なんでこんなことが出来るのだろうか!?
改めて、最初から読んでみる。
勢いのいい文章だが、一つ一つすごーく冷静に物事を見て、書かれているのである。
うーむ。
これはなかなかできないよ。
以下レビュー脱線
その昔、二人の作家が男性目線と女性目線で描いたベストセラー小説があった。
で、それを読んだ僕の感想は、「女性主人公はなんでこの男(性主人公)のこと好きになったんだ!?」であった。
でも、いまはそんなことは思わない。かつてあれを読んだときの俺よ、とんだ童貞ブタ野郎だったぜ。恋とはそういうもんなんだぜ。しっくりくることなんて恋じゃねーぜ。
以上脱線終了。
なんで↑のような脱線をしたかといいますと、この物語の素晴らしいところは、まるで二つの人格が物語を紡いでいるかのような錯覚を起こさせるのです。
冷静なわたしと情熱的わたし。それがもうとにかくせわしなく行き来することによって、不思議な運動が起こっている!
途中まで読んでの感想でございます。
そんなわけで、読んで楽しい、読み返すと、お! ここすごくいいね! と文章のつなぎ方に唸らせられる、名作であります。
なので読んでね。
オススメです。
主人公環ちゃんは『レコードショップUFO』でアルバイトをしている女の子です。絵を描くことが得意でちょっと個性的。
絵を描くことでお客さんのおばあさんやお好み焼き屋の店主はなさんの役に立とうとする思いやりを持った優しい女の子でもあります。
胸にダイナマイトがあるんだけどね。そうです、環ちゃんの胸には地球の未来を左右するダイナマイトが埋め込まれているのです。自身の未来もですが、地球の未来も危うい! 地球を救うためには仲間を見つけなくてはいけない。えっ、お好み焼きが何だって!??
しかし、この作品を拝読してレコードは実に奥深く味わいのあるものだと思いました。店長が仕事にするわけだよね。ええ、店長は勿論モヒカンです。
個性的な登場人物が多く登場する作品、キャラがケンカせず調和してるからすごい。
地球はどうなるのだろうね、ダイナマイトはどうなるんだろうね、環ちゃんはどうなるんだろうね。
優しく温かい日常が溢れた作品です。
私の胸元に爆発物が……?
何かの例えだと思うじゃないですか。
まさか本当にそのまんまの意味だと思わないじゃないですか‼︎
主人公はレコードショップでバイト中の高卒女子、環ちゃん。
と、他の主要な人物は……見た目にキッツいモヒカンのオッサン。バイト先の店長です。
モヒカンのオッサンに比べたら、環ちゃんはすこぶる普通の子に見える……
と思いきや、レコードショップで見つけたとある埃被りの音源から、「胸元にダイナマイトが埋まっている」ことを知らされ──
ダイナマイトを胸に抱えて過ごす奇妙な日常は、さまざまな登場人物に彩られています。
夫に先立たれたおばあちゃんや、カッコいいけどどっか抜けてる美人のお姉さん。
心にじんわりくる時もあり、思わずフフッと来る時もあり。
ダイナマイトの謎をなんとなく先延ばしにしながら、パズルのピース探しをしているような緊張感と、ありふれた日常の心地よい幸せが、何ともクセになります。
私はげえるさんのご作品が「胡桃田奈々と秘密の七日間」から大好きなのですが、
げえるさんのご作品にある特徴のひとつが「キャラのドギツい女の子」。
そして、そのドギツい女の子たちはいつもさりげなく可愛くて、いつのまにかちょっと恋してしまいそうになる。
とにかく、「濃くて可愛い女の子」を描くのがとてもお上手な方なんです。
頑張る女主人公、それはもうまさに環ちゃんそのもの。
ゆる〜く見えるけど、案外現実的で、毎日胸のダイナマイトをドキドキさせながら生きてる。
そんな環ちゃんの可愛いところを、あきさせずに魅せてくれる「げえるさん節」でぜひご堪能ください。
(*16話までの感想です)
レコードショップでバイトする女の子、三輪環ちゃんがとにかく優しくて温かい(たぶんビジュアルも可愛い !)。普段はちょっと素直になれないところもあるんですが根っこが優しいから、力になりたいと思ったら行動に移しちゃう。良い子なんです!
胸元のダイナマイトは、環ちゃんの心の変化によって熱くなったりするので、その行く末が始終心配な感じ……。
また、本作は音楽好きには持って来いのレコードショップを舞台としたお仕事小説としても十分に楽しめます。
地球の危機をも臭わせながらバイトを頑張る(バイトは頑張ってないかも?)環ちゃん目線の軽快な文章でサクサク読ませるところが魅力。ぜひ!