文化祭アクション

 マジか? なにこれ?? 劇の題材もだし、メインの配役もヤバイでしょ? 公正なくじ引きでこんな事になるか?


 文化祭実行委員である俺は教卓の前から黒板に書かれた文字を丁寧に黙読した


 劇の題材 『フラジャイルメモリー』


 あらすじ 窃盗犯のギャングに所属している孤児院育ちのヨータは、諸事情により組織に追われてしまい傷を追ってしまう

 そこを美少女アンドロイドのマリーに拾われる

 この社会では看護不足の為に看護専用のアンドロイドが生産されていた。

 マリーは看護するのが当たり前なので特別な感情も奉仕の精神も何もないが、人に優しくされた。と感じる窃盗犯ヨータはじょじょにマリーに惹かれていく

 当初の目的と葛藤しつつもマリーに惚れて言い寄るヨータ。少しずつマリーの中で人としての優しさや好意が芽生え始めるがマリーには秘密があり……

 




 アンドロイド。マリー役

 鈴影ひまり


 窃盗犯ヨータ 美馬陽太


 ギャングのボス。カイート役 高坂海斗

 etc


 配役が決まってから、書いた簡単なあらすじが、まぁまぁしっかりしてる!!

 クラスの中に映画研究会 略して『映研』で脚本している奴がいるから そいつが書いたんだがノリノリだな


 しかも俺には『役』ってつけてないから、本当の犯罪者みたいになってるじゃん。ヨータ事、美馬陽太容疑者じゃん!


 1番後ろに座るひまりに視線を移す頬杖をしながら窓際に目をやるも ものすっごい勢いでペン回しをしていた

 その隣ではあかりが ほくそ笑んでいる


 あいつはミスコンに出るから劇には出なくて良いしな……


「じゃあ 劇の題材と配役決まったし、脚本とかは大地に任せて良いんだよな? 」

「おう! 過去にお蔵入りしたのを手直すだけだから、もうほぼ出来てるぞ」

「了解! 後はくじ引きで役を引き当てなかった人たちは、適当に小道具係りや照明係りになるから希望があったら渡してる紙に記載して。人数見て調整して割り振る」


 ん? あかりが手を上げている


「あかり。どした? 」

「監督とか演技指導とか必要じゃん? 」

「それは脚本の大地に任せ」

「あかりがやる! 」

「お前はミスコンに出るんだろ? 」

「そうだけど 誰よりも陽太とひまりちゃんをスクリーンに輝かせられる事が出来るのは、あかりだけだよ」


 スクリーン上映とかねーから。


「じゃ じゃあ 俺は助監督で良いから、あかりちゃんが監督しなよ」


 顔を赤らめながら大地が言うと


「やった! ありがと大地。次以降の作品でも、助監督と脚本は任せて上げるわ」


 余計に顔を赤らめる大地。あいつもあかりのファンの1人だっけ?

 男は可愛い子には甘いのね……


「じゃあ 監督はあかり。助監督で大地な。大地、補助をしっかり頼む」


 はにかむ大地 そんなにあかりと一緒なのが嬉しいのかな


「って事で今日は終わりにします。遅くなってごめん。明日は係りの発表と、役を貰った人は台本を大地が配ります」


 ふぅ 何とか決まったが、こっから台詞覚えたり大変だよなぁ 来栖のミスコンもあるし


「ひまり! 」

「なに? 」


 帰ろうとするひまりを引き留めるが素っ気ないな。やっぱアンドロイド役が嫌なんだろ


「来栖の推薦人集め手伝って欲しいんだけど」

「ごめんなさい。今日はお母さんのお茶会に顔を出さないと行けないの」

「そっか。ごめん引き留めて 気を付けて」

「うん。また 明日ね」


 あかりの推薦人はもう集まったから良いけど 中等部は中等部で20人集めないとダメなんだっけ?

 中等部に知り合い何かいねーし あかりを連れてくと また男子中坊がわらわらとやってくるからな……


 やべっ 忘れてた 慌ててスマホを取り出す


「何のゲームしてんの? 」

「海斗か。オンラインRPGだよ、最近暇潰しに、やり始めたんだけど、ハマってしまって」

「ふ~ん。そんなに面白いのか? 」

「謎解きやボス戦とか他のプレイヤーと協力しながら進めるゲームだからさ。知らない人と話したり楽しいよ」


 興味無さそうに視線を俺のスマホから離す海斗


「俺には良く分かんねーよ リアルで話した方が良いじゃん」

「もちろん、リアルにはリアルの良いところもあるだろうけど、オンラインにもオンラインの良いところがあるんだよ」

「例えば? 」

「お互いを知らないからこそ、話せたりする内容とかってあるじゃん」

「まぁ分かるけど、俺はお互いを知らない奴に、話したりしたくないな」

「だから海斗は、こういうゲームが苦手なんだろ。それより中等部の校舎に付き合ってくれよ」


 廊下で中等部の校舎とは繋がってるので そのまま海斗と中等部に入ると

 海斗のせいか目立つこと この世代にありがちな

 格好良い先パイに憧れる可愛い後輩の自分。みたいな


 まっ 純粋に海斗は格好良いけど 廊下ですれ違う女の子たちは立ち止まり 目をハートにしながら海斗を見上げる

 そんななか男子生徒は俺を睨み付けたり あからさまに邪魔者扱いするような目をしている


 中等部にまで知れ渡る鈴影ツインズを俺が独り占めしてる。と思われているらしい

 海斗程の美貌なら こうもならなかったかも知れないが

 俺だもんなぁ 逆の立場でも舌打ちの1つはしたくなる


 幼馴染みパワー万歳


「っと3年1組ってここか。さすがに中には入りづらいよな」

「あっ 君、髪留めのヘアリボン、ラメ入りで似合ってて可愛いね。でさ、来栖さんっているかな? 」


 扉の付近にいた女の子に海斗が話し掛けると みるみる赤面になり挙動不審ながらも女の子は教室へと入っていった


 少し待つと黒髪お下げの眼鏡を掛けた来栖が、ため息を吐きながら こそこそとやって来た


「ちょっと 先パイ 教室まで来ないで下さいよ 目立っちゃうでしょ」


 小声で耳打ちしてくる来栖に


「俺たちは気にしてないから、なっ 陽太」

「私が気にするんです。何の為にボッチをやってると思ってるんですか? 海斗先パイと話してる何て噂になったら」

「なったら? 」


 わざと顔を近付かせる海斗に来栖は顔を上げると視線を合わせ


「妊娠した。って噂が広がります」

「俺、どんな奴だと中学生に思われてんだよ……」

「と とにかく、もう少ししたら同好会に行きますから待ってて下さいよ」


 言い残しそそくさと教室へ戻る来栖を見送った

 教室の中では遠目に来栖に視線を向けてはクスクス笑い出す奴らの姿が見えた

嫌な気分になる……


 先に行くことを来栖に連絡するべきだったな

 来栖の連絡先知らないけど


 同好会の部室へ向かう途中にスマホが振動したので

 取り出すとハマってるゲームのアイコンが出ていた


 フレンド希望か

 人数は多い方が有利にゲーム進められるしな。

 了承をクリックしスマホを後ろポケットに仕舞う


 部室に入るとあかりだけが座っており、イチゴオレの髪パック片手にスマホを弄っているようだった。


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