第31話


結局あれから花守さんとは全く関わっていない。

会社でたまに顔を合わせることもあるが無視されているのかいつもみたいに話しかけて来なくなった。

それもそれで怖いんだけどね。


お店のお手伝いもいつも通りで、仕事帰りにお店で手伝いをして土日はミラの街周辺で素材採取をしている。

祝日で休みが伸びるときは近くの町にも行ってみたりした。



「次の長期休み、王都に行かないか?

年に1回店やこちらの報告をしに王都に行くんだが、みどりは行ったことがなかっただろう?ミラからは馬で1日半かかるんだがどうだ?」


王都!

なんか響きからして凄そうだし、ぜひ行きたい!


「行きたいです!もうそろそろ7連休があるんですけどその時で大丈夫ですか?」


「ああ。では父にも連絡しておこう。」


ん?お父さん?

なぜお父さんがでてくるんだ?


「店の仕事は父に任じられてやっているんだ。だから1年に1度は父に会って仕事も込みの近況報告をしている。

それに姉も王都に住んでいるからな。

その機会にいつも会っているんだ。」


お姉さんも!!

うわぁぁぁ、きっとあおいさんのご家族ってみんな素敵なんだろうなぁ。


「お母さんも王都に住んでいるんですか?」


「いや、母は子供の頃に亡くなっている。

いるのは父と姉だけだ。」


あおいさんの眉間に皺が寄った。

あ。失敗したな。

私も親がいないからわかっていたはずなのに、何も考えずに聞いてしまった。


「すみません。

実は私も両親が亡くなっていて、自分もそうだからわかっていたはずなのに、気軽に聞いちゃって自己嫌悪です。」


「そうだったのか、みどりのご両親も。」


「はい。」


なんだかしんみりしてしまった。


「子供の時のことだから、そう気にするな。」


「子供の時のことでも、悲しいものは悲しいです。

私も母は大人になってからなくなりましたけど、父は子供の時に亡くなってます。

でも未だに思い出すし、悲しいですよ。」



「そうだな。」


あおいさんは、そうぽつりと呟いた。




「すごくいいお天気!

旅行日和ですね!」


今日から7連休。

あおいさんと一緒にはじめての王都に向かう。

王都までは1日半かかるので今日は仕事がある日以上に早起きだ。


「馬を借りておいた。

進めるところまで進んで今日はどこか宿に泊まろう。」


見覚えのある馬だなぁと思ったら、ロイヒテンデスに行った時と同じ子を借りてきたみたい。

乗り慣れている馬の方がいいだろう。だって。

白い馬でやっぱり何度見てもあおいさんにぴったりの子だ。


「出発するぞ。」


ミラを出発した後は適当に休憩をとりつつ走り続けた。


「見えてきた。

王都に行くときはいつもあの町にある宿に泊まっているんだ。」


門で身分証を見せ町に入って宿に向かう。

少し先にある優しい茶色と緑色の建物がいつも泊まる宿らしい。


《小鳥の宿り木》


「いらっしゃいませー!

あら、アオイさん。お久しぶり!」


「久しぶり、1年ぶりだな。

みどり、この人は女将のアリータだ。」


「あら、あらあら!

アオイさん、誰かを連れてくるなんてはじめてじゃない!しかもかわいい女の子だなんて!」


女の子なんて歳じゃないよー!

なんか勘違いされている気がする・・・。


「この子はみどりだ。

弟子をとったんたが王都にまだ行ったことがないから今回一緒に連れてきたんだ。」


「弟子のみどりです。

よろしくお願いします!」



「あら、アオイさんが弟子に取るなんて!才能あるのね。

よろしくね。」


「とりあえず部屋2つと夕食を頼む。

あと明日の朝食もつけてくれ。」


「はいよ!

鍵はこれ、夕食と朝食はいつも通りそこの食堂でとってちょうだいね。」


あおいさんと夕食を取った後部屋に来たけど、今まで泊まったことのある宿よりも広いし綺麗な気がする。

王都に近づいたからかなぁ?

明日はいよいよ王都だ。楽しみだなぁ。




次の日も王都に向かうために早起きをして朝食をとった。


「それじゃ女将、また帰りに寄るからよろしく頼む。」


「はいよ!

ミドリちゃんもまたね!」


「はい。また帰りもよろしくお願いします!」


預けていた馬を引き取り町を出る。


「ここからは半日もしないで王都に着くだろう。

昼食は王都で取りたい、少し急ぐぞ。」


「はい!」


頼むぞ。とあおいさんが馬を撫で、王都に向けて走り出した。

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