六年前

第1話 毎朝のこと

悠真ゆうま~! 早くしなさいよ! 学校に遅れるぞ!」

 わたしは幼なじみの悠真の部屋の前にいた。こんな感じで迎えに行く。

陽菜乃ひなの、うるせぇ……近所迷惑になるから」

 制服に着替えた色素薄い系男子、これがわたしの幼なじみの悠真だ。

 年相応には見えない、逆に私服でうろつくと、年齢よりも四つ上以上に見られるらしい。

 わたしには普通の高校生にしか、見れないけれどね。

 悠真は黒髪にブルーグレーの瞳をしてて、どことなく外国人の血を引いた容姿をしている。

 悠真の亡くなった父さんがロシアとのクオーターで、同い年の頃の写真を見せてくれて、生き写しかのようにそっくりなんだ。

「おばちゃん。連れてくね! 学校」

「ごめんなさいね、毎朝。陽菜乃ちゃん」

「やっばい~、寝坊した! 陽菜乃ちゃん、おはよう!」

 ドタドタと、階段から駆け降りてきたのは、悠真のお姉ちゃんのハル姉だ。

 大学生で医学部六年生なの。ついこの前に国家試験を受験して、結果待ちみたいだ。

「行ってきます! 悠真、朝ごはん、食べなさいね!」

「お~。」

 朝ごはんを食べるみたいだから、玄関先で待つことにした。

 悠真とは幼なじみ。家も隣同士で、生まれた頃からのつきあいだ。

 悠真は小さな頃から病弱で外になかなか遊びにいけなかったけど、わたしがしょっちゅう遊びに来ていたから……すごく本人も助かったらしい。

「お待たせ、陽菜乃」

「悠真、行くよ! ここから、バスで十分乗らなきゃいけないんだからね! 最寄り駅まで!」

「マジか、走るか」

「この前まで寝込んでたのに、悠真は大丈夫なの?」

 悠真はうなずき、ダッシュでバス停に向かう。




「セーフ! 最寄り駅経由の奴、あと一分で来るぞ」

 息切れしつつも、時刻表を見ていた。

 悠真は朝がとても弱くて、わたしが毎朝迎えに行かなきゃ、絶対に遅刻する時間に起きてくるからだ。

 バスに乗ると、そのまま経由する最寄り駅で降りると、電車に乗り換えて東京方面の電車に乗る。

 幸い、電車はホームに上がった時点で到着していたから、そのまま乗れた。

「陽菜乃、お前。陸上部に入れば?」

「え? 嫌だよ。走るの、好きじゃないし。うちは軽音部にはいるから」

「俺も、考えてたんだけど」

「え。軽音部? 楽器できるの?」

 そう言った瞬間、デコピンされてしまった。

「俺はベースが弾けるから、安心しろ。まさか、できないとか思ってただろ」

 図星です。

「ごめん、でも、ベースならいいや。わたし、ギターの方がいいから」

 これが毎朝の他愛もない通学風景。

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