4.二人で見る映画



その日の俺を見る目はやたら奇異だった。そんな風に見られて気分は良くないが、でも見たくなる気持ちもわかる。こんな顔をしていれば、視線を集めるのも当たり前だ。


左頬に大きく広がった青い痣。


家に治療してくれる人なんていないから、そのまま学校に来た。マスクで隠すとか、湿布を貼るとかすればせめて良かったのだろうが、家のどこにそれがあるのか分からない。お小遣いももらっていないから、貴重なバイト代をそんなことに使いたくないし。まさに殴られました、というような顔。勿論痛くてしかたない。そんな本気で殴らなくてもいいじゃないか。

あの後、父さんは無言で弟を連れて部屋から出て行った。願わくば俺の部屋に近寄らないようにきつく言っておいてもらいたい。あいつと関わるたびに俺は何かを失っていく気がするから。



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放課後、待てど暮らせど塚本くんはなかなかやってこなかった。待ってやっていただけに何と無く拍子抜けな感じだ。昨日はあんなにもしつこかったくせに。いや全然来ないなら来ないでいいんだけど。しびれを切らして再生ボタンを押そうとしたところで、ガラガラっと騒々しく扉が開いた。暗い部屋の中に廊下の光が突然入って来る。映画を見るためにカーテンも全て閉めて一切光を遮断しているから、その眼を指す光がとても眩しい。眇めた目の先に目立つ金髪が見えて、誰がやって来たのかはすぐに分かった。


「おせーよ。来ないかと思った」


「すいません。しつこくついてくるやつがいて」


「いーからさっさと閉めろ。眩しい」


塚本くんは慌てて教室に入りドアを閉める。俺はすぐに再生ボタンを押すと、いつもの席に座った。塚本くんも昨日と同じように俺の隣の席に座る。映像が流れている間、塚本くんは俺の言った条件を守って一言も喋りはしない。というよりも流される映像に釘付けになって、喋る気にもならないみたいだった。今日はアニメではないが、ファンタジーなアクションもの。俳優の過激なアクションシーンが中々気に入っている。俺が作った同好会なのだから、彼が嫌がろうが俺の好きなものを見させてもらうつもりだった。しかし、自分の好きなものを相手も気に入ってくれているらしいのは嬉しい。彼の子供みたいにキラキラとした横顔を見て、いつもより心が高揚する。横目で盗み見た彼の表情に満足して俺も映画に集中した。


こいつが来るのを待っていてよかったかもしれない、と思った。

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