春のあけぼの

終わりと新たな始まり

「従兄妹なのに……、しちゃったね……」

 萌絵は薄手の布団で口までを隠し、上目使いで俺に言う。胸がキュっとなる。つい先ほどまでお互いに全裸で抱き合っていたのに、不思議な感覚だ。よく見れば、俺も全裸で下も丸見えだ。なんだか恥ずかしくなり、布団の端で下だけでも隠す。


「その……、ご飯、準備するね!」

 一瞬の逡巡の後、萌絵は思い切って布団から出る。再び萌絵の全身が露わになる。夕日に照らされ、陰影を作り出す肢体。その光景からは神々しさすら感じられ、俺は胸に詰まるやら、胸が高鳴るやら、アレがどうなるやら……。


「ちょ、ちょっと! 恥ずかしいからあまりジロジロみないでっ」

 ベッド脇に落ちていた服を焦って拾い、萌絵は身体を隠す。せっかくの景色が隠れてしまい残念に感じると同時に、その恥じらう姿もまたいい物だと──



 ドンッ!!



「え?」

 唐突に入り口の扉が開き、そこに一人の女が立っていた。女はズカズカと室内に入り込み、立っていた萌絵の間近まで近づく。


「気持ち悪い」

 女は萌絵に向けて吐き捨てるように言うと、棒状の何かを振り回し、萌絵の頭部を打ち付けた。

「萌絵!!」

「うっさい!!」

 頭を強打され、その勢いのままに萌絵は床に倒れた。その頭部の傷口からは、乳白色の液体がゴボッっという音とともに湧き出してくる。

「も、萌絵……?」

 あまりの事態と想像外の状況に、俺は体が動かず、言葉もでない。


「きもい、きもい、きしょくわるい!!」

 女は執拗に倒れた萌絵を強打する。一撃振り下ろすたびに白い飛沫が舞い、一撃振り下ろすたびに萌絵の体が崩れ、白い液体と樹脂状の部品に変貌していく。


「はぁ、はぁ、はぁ……、」

 気が済んだのか、はたまた疲れたのか、萌絵だったモノがただのガラクタになったところで、女は手を止めた。

「ふぅ……、あんた、こんなお人形遊びしてて楽しいの?」

 女は吐き出すように俺に告げる。俺はその女から目が離せない。この女が誰なのかわからない。思い出せない。だが、なぜかわからないが、俺はこの女を知っている、知っているはず、そう確信する何かがあった。それと同時によくわからない"恐怖"が俺の身を竦ませる。


「私は、こんなクソッたれな計画を実行している奴らに復讐する……。死ぬほど不本意だけど、あんたも手を貸して。」

 女はそう言って手を差し伸べてくる。とても怖い。それこそ死ぬほどに怖い。しかし、なぜかその手を取らなくてはいけない。そんな気がした。

 俺は、おずおずと手を伸ばし──

「そのまえに……、今のあんた気持ち悪いから手を洗って、そんで服着て」

 俺の恐怖は相変わらず拭えないようだ……。












【シナリオプラン01038へ移行===============繁殖行為までの推定時間:194,400min】

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