3.ファ○コンの最大の敵は掃除機とネコ

「こ、これがファ○コン……?」

「ゲーム機だったら何でもファ○コン扱いって、一昔前のおばちゃんか!」

 テレビ画面に映るゲームのタイトル画面を見て、四王天はわなわな震えている。

 簡素な昼食を食べた後、何の気なしに「ゲームでもやってくか?」と誘ってみたところ、「そのゲームというのはもしかしてテレビゲームというやつか!?」と、予想外の食いつきを見せた。まあ、これまでテレビゲームなんて見たこともなかったのかもな。


「これ持って」

「ほぅ、これは……」

 四王天にワイヤレスコントローラを渡す。彼女をそれを手に持ち、くるくる回したり、ひっくり返してみたりと不思議そうにこねくり回している。初めて触れたゲームのコントローラに興味津々といった風だ。

「これはどうやった遊ぶものなのだ?」

「とりあえずコントローラをブーメランみたいの持つのはやめろ。投げても戻ってこない」

 彼女は「おぉ、そうか」と言いつつ、投擲姿勢を解除する。やめてくれ、コントローラもしくはテレビ、あるいはその両方がぶっ壊れる。



 超初心者が遊ぶならどのゲーム良いだろうか。難易度を低くできるやつで、フォローの意味でも共闘できるやつがいいよなぁ。と言うことで、一騎当千の武将が無双するゲームをチョイスした。


「ほれ、こうやってもって、こことここで動かす」

「おお……こいつ、動くぞ」

「そりゃゲームだからな」


 四王天もそこそこ操作ができている。初めてにしては上手だ。あ、敵に囲まれてライフが減っていく。

「そこの肉まんのところへ!」

 直ぐ近くにライフを回復するアイテムである"肉まん"が落ちていた。俺の指示に従い、四王天が"肉まん"を取得し、ライフが回復した。

「すごい、五倍以上のエネルギーゲインがある」

「エネルギーゲインってなんだよ! 何と比較して五倍以上だよ! っていうか、セリフがヤバイって!」


「よっ、おわ、」

 四王天は夢中でボタンを連打しつつ、敵の動きに驚き、変な声を出したりしている。

「おぉっと、っと」

 操作が間に合わず、コントローラを持った状態で腕が動き、体がねじれている。ねじれた腕に潰され、胸が強調される。これはいいものだ……。

「あ……」

 うっかり余所見していたら、俺のキャラが瀕死になっていた。


 敵陣に突撃した四王天が再び敵に囲まれ、そこへ敵武将が接近。連続で攻撃を受けている。

「ちょっとまってな、今助けに行くから」

「やってやる! 少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ!!」

「少佐誰だよ!! ねぇ、狙ってるんだよね? 狙って言ってるんだよね? セリフ詳しすぎない!?」



 1ステージプレイしただけで、なんだかどっと疲れた。四王天はキラキラした瞳で、テレビ画面と俺を交互に見てくる。コントローラを離す気はないらしい。どうやら気に入っていただけたようだ。こんな様子だけ見ていれば、美人だしとても可愛らしい人なんだがなぁ……、残念なことに、何かが世間とズレている。


 相変わらず輝く瞳で俺を見つめてくる。仕方ない、新たなステージを開始しますか。そしてあっという間に敵陣で包囲される四王天。周囲の敵から小突かれまくっている。

「く、殺せ」

「それ負けて取っ捕まった後に言うセリフだからね!? っていうか本当にお嬢様なんだよね!? なんか世間知らずっぽいキャラ崩壊してない!?」


 楽しんでいただけて、なにより……。

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